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第3回 学術大会
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2011年11月27日 名古屋 愛知学院大学歯学部末盛学舎
7階セミナー室において、活況のうちに行われました。 |
第3回 日本メタルフリー歯科臨床学会 学術大会に寄せて
理事長 本間憲章
東日本大震災で被災されました皆様、更に福島第一原発問題で避難生活を強いられていらっしゃる皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
今年はあまりに予期せぬ不幸な出来事の多かった年でありました。
世界経済の混迷・不況風は我々歯科界にも少なからず影響を及ぼしているものと推察されます。そのような状況下で、この大会が日本の歯科界に、そして国民一人ひとりに少しでも明るい話題を提供できればと願っております。
長い間わが国日本では金属が主体の歯科修復物が多く施されてまいりました。金属材料が歯科治療に大変寄与してきましたことは、誰も否定できません。 しかし、一方ではレジンやセラミックスの進歩が確実に歯科治療を変えつつあることも誰もが知る事実となってまいりました。
患者さんが、歯科治療にも審美性を求め、アレルギー懸念の少ない材料による歯科治療が自然な流れのような時代にあって、この、日本メタルフリー歯科臨床学会が、今後果たすべき役割は大変多岐にわたるものと考えております。
まだ活動を始めて間もない学会ではございますが、多くの医科歯科学識経験者・歯科臨床家・歯科技工士・歯科材料メーカー、様々な分野の方々がこの学会を通じて、多くの日本国民の健康に寄与できる歯科医療の推進役として活動していただけましたら、発起人の一人としても大変うれしく思います。 どうぞ、皆様の更なるご協力をお願いいたします。
今年、第3回目の学術大会を、ここ名古屋 愛知学院大学歯学部附属病院口腔金属アレルギー外来 服部正巳教授に大会長お願いして、愛知学院大学歯学部にて開催できますことに心より感謝申し上げ、関係各位のご尽力に御礼申し上げます。
第3回 日本メタルフリー歯科臨床学会学術大会を開催するに当たり
大会長 服部正巳
今回で3回目を向かえるメタルフリー歯科臨床学会の学術大会ですが、このメタルフリーという言葉は歯科臨床においてほとんどの歯科医師が認識している言葉であり、歯科治療において保険医療制度では金属が必要不可欠の現状でありながら、いかに多くの歯科医師が金属に代わる生体安全性の高い材料を求めているかが伺えます。メタルフリー歯科治療は審美的にも優れているのは当然ですが、歯科用金属による金属アレルギーを根絶するのもこの学会の使命の一つとしてあげられます。今回の学術大会は金属アレルギーに関して皮膚科医の鶴田先生に特別講演をお願いしました。シンポジウム1はジルコニアの基礎と臨床、シンポジウム2はノンクラスプデンチャーの臨床と技工、シンポジウム3は金属アレルギーにおける皮膚科と歯科の連携、新素材に関するトピック、ランチョンセミナーなどを企画しました。それぞれの先生はメタルフリー歯科臨床に造詣の深い先生方であり、会員の為になる講演内容であると考えています。
歯科界については暗いニュースが多い昨今ですが、我々日本メタルフリー歯科臨床学会の会員それぞれがメタルフリー歯科治療の素晴らしさを実感し、材料の開発研究や、臨床応用について広めていただけたならば、歯科界の将来は明るいものであると信じています。
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第3回 日本メタルフリー歯科臨床学会 学術大会講演
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シンポジウム 1 ジルコニアの基礎と臨床
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ジルコニアの材料特性と歯科臨床応用
伴 清治
愛知学院大学歯学部歯科理工学講座
現在、ジルコニアは歯科臨床においてブラケットポスト、ラミネート、クラウン・ブリッジ、アバットメント、インプラント、切削/研削/手術器具などに応用されており、メタルフリーレストレーションの実現に貢献しています。日本国内において最初に製造販売承認を受けたジルコニアはDentsply社のCerconで、2005年4月でした。それ以降、多くのメーカーが参入し、今日に至っています。そして、歯科用CAD/CAMシステムの発展とともに、新しい素材および従来品との融合が進んでいます。各臨床応用にはジルコニア固有の材料特性が活かされています。ただし、注意を喚起したいのは、”ジルコニアはホワイトメタル”という紹介が良くされていますが、ジルコニアは金属ではなく、セラミックスであるということです。ジルコニアは金属のような光沢はなく、電気も熱も伝えにくい素材です。また、塑性変形はほとんどせず、金属のような展延性はありません。しかし、ジルコニアはセラミックスの中では群を抜いて高い曲げ強さと破壊靭性値を示します。例えば、同じ形状であれば純チタンと同等またはそれ以上の曲げ強さを示します。ところが、ジルコニアは耐力を超えると破断します。一方純チタンは耐力という限界を超えると曲って塑性変形はしますが破断はしません。また、ジルコニアは光屈折率が大きく、結晶粒界内温度では高い化学的安定性を示しますが、100℃以上の高温では反応性を示します。このように、ジルコニアは歯科材料として完璧な性質を有しているわけではなく、利点・欠点を有しています。これらの特徴を活かした歯科臨床応用が必要であるとともに、適材・適所を考慮すれば、今後も歯科臨床応用が進展していくものと期待しています。今回は、このようなジルコニアの特徴的な材料特性と歯科臨床応用についてお話ししたいと思います。
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ジルコニア修復を再考する
山瀬 勝
日本歯科大学附属病院総合診療科
今日の歯科治療において、患者の審美的要求やアレルギーに対する関心の高まりから、メタルフリー修復を選択する機会が増加している。中でも審美性と生体親和性を兼ね備えたセラミックスはメタルフリー修復法を代表する材料であり、さまざまなセラミックスを用いることでこれまでメタルクラウンやメタルブリッジ、メタルセラミックスが担っていた修復治療を金属を使用せずに行うオールセラミック修復が可能となった。
セラミック材料の中でもジルコニアはその高い強度から応用範囲が広く、新世代の材料として大きく取り上げられている。しかし臨床応用が進むにつれて、いくつかの問題点も明らかとなってきた。ジルコニア修復を成功させるためには材料の特徴を把握し、支台歯形成から接着操作にいたるまでの臨床手技を十分理解する必要がある。本講演ではジルコニア修復の特徴と問題点、そして臨床において失敗しないためのポイントについて言及する。
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特別講演
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皮膚科から見た金属アレルギー
鶴田京子
藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院皮膚科
私たちはさまざまな環境の中で毎日日常生活を送っている。その中にはアレルギーを起こしうる種々の原因となる科学物質が存在し、それは金属、薬剤、化粧品、繊維、食物、植物など多岐に渡っており、年代、性別によっても異なり、また社会の変化を反映し、変遷を繰り返してきている。
その中でも、今回アレルゲンとして取り上げる金属は、生体に必要な必須微量金属という重要な役割を担っている。しかし、ひとたび感作源となると、局所のみならず全身にアレルギー症状を引き起こす。
私たち皮膚科医は金属アレルギーを疑う患者の原因検索としてパッチテストを施行しており、この検査は唯一金属アレルギーを確認する有用な皮膚検査である。
今回[皮膚科からみた金属アレルギー]という講演をさせて頂く機会をえましたので、皮膚科医の立場から①金属アレルギーの発症機序、②金属アレルギーによっておこる皮膚疾患、③金属アレルギーの診断方法(パッチテスト貼付方法、判定基準および使用している歯科金属アレルゲン、金属含有製品などの解説)、④治療、⑤予防および患者説明などについて解説する。
皮膚疾患の原因に金属アレルギーが関与していると判明した場合は、皮膚科のみの治療では不十分であり、口腔内の歯科金属分析、除去や他の金属への置換などの歯科治療を必要とすることが多い。そのために、歯科医と患者を共有し治療を進めて行くことが重要であると痛感している。
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最新トピック
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新素材の開発経緯と応用
大原盛勝
Weldemz
本歯科材料を開発するに至ってのコンセプトは人体に対し安全性が確保されている事が第一条件である。
従来より存在する歯科用補綴材料の中には人体に対して微量ではあるが有害な成分が検出されている。また、近年では金属や樹脂が原因での接触皮膚炎の報告もある。また、最近の金価格の高騰により歯科用金属の価格もいままで経験したことがない価格にまで高騰し、歯科界に悪影響を与えているのが現状である。
そこで、生体安全性を第一に考え、金属を使用しないで、修復処置が可能な材料の研究開発を8年ほど前から行ってきた。今回、生体安全性の高い素材を発見し、歯科用修復材料として使用可能か否かを検討するために各種試験を行い、良好な結果を得て、厚生労働省の薬事法の認可を得たので報告する。
本歯科材料の開発コンセプトは生体安全性に重点を置いたが、それ以外にも以下の点に留意した。
①歯科補綴装置に活用できる程度の加工精度を有すること。
②加工する際に複雑な工程がないこと。
③歯科用材料としての強度、耐久性に優れていること。
④補綴装置の装着が簡単であること。
⑤患者の満足が得られるものであること。
現時点では臨床的にほぼ満足が得られている。また、本製品は世界特許を取得しており海外での臨床モニター報告も満足が得られる結果である。
本発表では新素材の可能性を探りながら開発の経緯、安全性試験、薬事出願経緯、臨床例、患者満足度、歯科技工応用例について詳細に報告する予定である。
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シンポジウム 2 ノンクラスプデンチャーの臨床と技工
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熱可塑性ポリアミドナイロン樹脂
「バイオ・トーン」の特徴と臨床
三品富康
株式会社浅井歯科技研
国内においてポリアミドナイロン樹脂が厚生労働省の認可を受け正規に義歯に応用できるようになったには2008何年4月という最近のことである。この樹脂を単体(人工歯以外)として用いる部分床義歯を国内では俗称と思われるが「ノンクラスプデンチャー」として急速に普及している。通常の部分床義歯の作製に用いられるPMMAは、その素材の脆弱性から単体で用いられることはない。強大な力を受けなければならない維持装置、大小連結子等は金属を用いて義歯の構成要素としている。特に大連結子は義歯の破折とたわみに抵抗する為の強度が要求されるのであるが、それでも臨床に於いて破折は往々にして起きているのである。ポリアミドナイロン樹脂はその柔軟な弾力によってその破折を回避する真逆の発想であった。しかし、ソリッドな大連結子は残存組織を保護する為の義歯の重要な要件である。そして、レストはさらに強度が要求される義歯の構成要素であり、咬合支持を受けて鈎歯に咬合を伝達し、顎堤を保護し、クラスプの位置を保つ重要な役割があるのである。
これら金属が担ってきた役割をポリアミドナイロン樹脂に期待するのは不可能である。
そのような前提の中、我々のポリアミド選択基準は以下の要点になった。今回はその詳細について報告する。
- 適度に硬いものであること。:ポリアミドナイロン樹脂の弾力性はその容積によって変じるので弾力を求めたいところは薄く、弾力を抑えたいところは厚くすることでコントロールさせたいのである。
- 色調に安定性があること。:熱可塑性樹脂は高温で軟化する為、製品によっては軟化温度の微妙な変化で色調が変わることが往々にして起きてしまうのである。
又、以上の報告から導かれる熱可塑成形の利点と欠点、弾性樹脂義歯特有の設計について論考したい。
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支台荷重、義歯床下荷重から見た
ノンクラスプデンチャーに関する考察
渡辺 誠
和田精密歯研株式会社
近年の社会的ニーズに対応する審美性に優れた部分床義歯として、金属製クラスプを使用せず、軟性床用材料を使用しその弾性を維持力として応用したノンクラスプデンチャー(以下NCD)の臨床応用が拡大している。NCDは支台歯に支持・把持を強く求めないという、従来の部分床義歯とは大きく異なった概念のもとに設計されるため、口腔内での機能時において如何なる挙動を示すのか、特に支台歯や顎堤粘膜にどのような影響を与えるかに関しては不明な点が多い。
NCDに用いられる代表的な床用材料としては、弾性が高くたわみの大きいポリアミドナイロン系樹脂と、比較的弾性の低いものの衝撃強さ、耐久性に優れたポリカーボネート系樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂がその材料として臨床応用されている。
そのためその適応症は、数少ない臨床報告や術者の経験則に基づき決定されているに過ぎないのが現状である。すなわち、現時点ではNCDが機能時に残存組織、特に支台歯や義歯床下粘膜に与える機能的な影響に関する実験的データは皆無であり、力学的エビデンスに基づくNCDの設計指針、臨床応用のガイドラインは存在しない。
現在は、ポリカーボネート系樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂の二種類を採用して臨床応用しているが、従来の金属クラスプ応用の部分床義歯とNCD各素材別のテストピースを製作し、支台歯および床下粘膜部へ加わる荷重を静力学的に測定可能な装置を開発して義歯咬合面上に荷重を付加した際のこれら荷重動態に関し、NCDと一般的な部分床義歯について比較検討し、NCDにおける支台歯や義歯床下粘膜に加わる荷重様相を解明することで、NCDの臨床応用における生体力学的根拠に基づくガイドライン設定の一助となることを目的とした。
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バルプラストデンチャー
-歯科技工所からの臨床例報告-
成田 慎
株式会社ループ 有床義歯部
近年、ノンクラスプデンチャーという名称で、弾性力の高い樹脂を用いた義歯が臨床応用され、その種類も厚生労働省の認可材料としてここ数年で増えてきている。現在市販されているノンクラスプ床用材料を系統別で分類すると、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、アクリリック系であり、それぞれに材質特性が異なるためにその特性を考慮した設計が必要になる。また、材質が多岐にわたることもあり、このような材質を用いた部分床義歯においての設計基準はまだ確立されておらず、現状は従来のリジットサポートの論理を踏まえて、術者の経験に基づいて設計されている。
今回のシンポジウムでは、当社はポリアミド系のバルプラストを紹介する。バルプラストは既にアメリカをはじめ諸外国で使用され、最も臨床実績の長いノンクラスプ床用材料である。主なバルプラストの特長としては、従来の金属クラスプ付きの義歯よりも審美性に優れ、薄くて装着感が良く、食片圧入が少ないこと、また金属アレルギーの患者に使用できることである。さらに、優れた弾性力と破折しないことにより設計の応用範囲が広く、他のノンクラスプ床用材料では難しいとされる設計が可能である。特に支台歯の負担を軽減したい症例や複数の支台歯の歯軸方向が異なる症例などに応用できる点は、弾性力の優れたバルプラストの最大の特長であると考える。
当社は、バルプラストを使用した臨床技工における一連の製作工程の中で、研磨や適合性、又は修理など、これまでに難しいとさたことを技術的に克服してきた。さらに当社の特殊技術であるシリコーンとの併用は、このバルプラストの特性をさらに向上させることになった。そこで、今回のシンポジウムでは、実際の臨床例に即しバルプラストの材質特性を生かしたメタルフリーのノンクラスプデンチャーを当社の技術と併せて紹介する。
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シンポジウム 3 金属アレルギーにおける皮膚科と歯科の連携
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歯科との連携における金属アレルギー診療の実際
矢上晶子
藤田保健衛生大学医学部皮膚科学
近年、歯科金属アレルギーや口唇・口腔病変のため歯科および皮膚科を受診する患者が増えています。歯科と皮膚科において連携診療が必要な疾患は多彩で、病巣感染が疑われる掌蹠膿疱症、多形滲出性紅斑、蕁麻疹、尋常性乾癬、さらに難治性の慢性口腔粘膜病変やカンジダ症などが挙げられます。その中でも、本シンポジウムのテーマである金属アレルギーが疑われ皮膚科を受診する患者さんは特に多い傾向にあります。われわれ皮膚科医はそのような患者さんに詳しく問診をした上でパッチテストを行うのですが、金属というのは、その特殊な抗原性により歯科金属によるパッチテストを行っても反応が得られなかったり、陽性反応が得られた場合に金属抗原を除去しても皮膚病変が改善しないことがあり、それぞれの医療現場で検査や治療、患者指導に苦慮していることが少なくありません。そのような現状から、両診療科の専門的な知識や情報を共有し、より柔軟な診療連携体制を確立することが求められるようになってきました。
今回の発表では、皮膚科で行うパッチテストの実際を概説し、実際の症例を供覧しながら、皮膚科で行う金属アレルゲンに対するパッチテストの有用制と限界、皮膚科から歯科の先生にご提供する情報の活用法等について述べたいと思います。
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歯科から見た金属アレルギー
池戸泉美
愛知学院大学歯学部高齢者歯科学講座
愛知学院大学歯学部附属病院口腔金属アレルギー外来
私たちの生活環境中の金属は近年著しく種類も量も増加している。身につける装飾品として指輪、ネックレス、ピアスなどがあり特にピアスは耳朶に孔を開けて使用するものであり、ピアスの流行で金属に対する感作率が増大し、アレルギー性接触皮膚炎がかなりみられるようになった。接触アレルゲンとしての金属の中で感作率の高い元素はニッケルで、次いで水銀、クロム、コバルトである。これらの金属は歯科治療によく使用されており、すでに感作されている人は歯科治療後に症状を呈することがある。これは、歯科用金属は過酷な口腔環境の中で機能をはたさなければならず、口腔内で比較的容易にイオン化し、金属アレルギーの症状を現すことがある。しかし、現状では歯科治療に金属は必要不可欠である。そこで、歯科用金属が原因で金属アレルギーの症状を発見した患者さんが適切な治療を受けることができるように、皮膚科医と歯科医が知識を共有することが重要と考え、歯科と皮膚科連携ワークショップ2010を開催した。そこで、歯科医師から皮膚科医への医療情報提供、また、その逆の皮膚科医から歯科医への医療情報提供の為のテンプレートを作成した。今回はその情報も含めて、愛知学院大学歯学部附属病院口腔金属アレルギー外来の詳細を報告させて頂きます。
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皮膚科との連携は金属アレルギーだけでは無い事も
知っていてください
押村 進
愛知県名古屋市開業 おしむら医院 院長
最近マスメディアなどで歯科金属アレルギーなどの報道がされ私どもの歯科医院にも歯科金属のアレルギーを疑って来院される患者が増えている。しかしこういった患者の中でも歯科金属などのパッチテストを施工しても反応が無かったり反応した金属などをアレルギーのない歯科材料に置換しても皮膚症状が改善しない症例も多数経験している。
実際に掌蹠膿疱症等の症例で歯性病巣感染を治療していくことにより皮膚疾患も軽快・完治する症例も多数有ることも事実である。歯科的な金属・歯性病巣感染といった2方向の観点で患者を診ていくことが大切である。実際歯科医師向けに歯科金属のアレルギーなどについて書かれている本(デンタル・ダイアモンド社のGPの為の金属アレルギー)などでも掌蹠膿疱症の原因としては不明な点が多いが、第一に考えるべきは、口蓋扁桃の慢性病巣感染である。ほかに歯根・副鼻腔・中耳・リンパ節・虫垂・胆嚢・骨髄・卵管・前立腺・精嚢などの病巣感染も関与が示唆されているが、扁桃炎・歯周炎・慢性副鼻腔炎などの頭頚部の病巣感染が80~90%を占めると記載されており、扁桃摘出術・抜歯などの処置により軽快する例が多いことが示されている。特にそういった手術後に一時的な悪化が見られる場合は、予後が良いと書かれている。
歯科金属アレルギーについては、掌蹠膿疱症等の場合は第2の原因として念頭に入れておくべきと考えられる。
上記の様な観点により病巣感染を考え2方向で診て行く事も大切である。
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金属アレルギーにおける皮膚科との連携
川村弘樹
日本歯科大学附属病院総合診療科
口腔粘膜や皮膚の一部に赤色などのびらんや粘膜などの種々の病変を来し、診断に苦慮することがあるが、口腔粘膜や皮膚に現れる症状は、局所原因ばかりではなく、全身疾患の一分症であることが少なくない。一方、最近では、歯冠修復にもちいられた金属やレジンなどイオンが遊離し、体内に蓄積されこれがアレルゲンとなり、前身皮膚に丘疹、膿疱、局面などを保有する患者が増加傾向にある。いずれも、その発症メカニズムについては、まだ明らかにされていない。
当院では歯科と医科とが連携して2010年4月1日から「口腔アレルギー外来」を開設した。当院の口腔アレルギー外来は歯科サイドにおいては口腔外科、総合診療科の歯科医師、加えて歯科技工士が参画している。医科は皮膚科、内科の各医師または看護部門、薬剤部門などで構成され、密接な連携をとり、患者に用いる試薬の管理、作成、使用等を行っているが、このシステムはやっと緒についたところである。歯科大学附属病院内で歯科と医科とが連携して口腔アレルギー外来を開設するのは、全国的に見ても比較的少ない。
口腔アレルギー外来を設置した目的は、当面、歯科材料によって生じた口腔や全身に生じたアレルギーの原因を究明し、全人的な診断を行い、総合的な治療を系統的に行うためである。開設した平成22年4月1日から23年6月30日までの1年3か月間に来院した患者は100名(男性22名、女性78名)であり、女性の比率が高いことが認められた。他院からの紹介でパッチテストだけを希望し来院する患者が多いが、口腔や皮膚症状を有する患者が意外に少なかった。新聞やテレビ報道により、金属歯冠修復物の装着に対する不安を抱いて、紹介来院する患者が多く、紹介医自身も十分理解していないで紹介するケースも少なくなかった。
今回は当院の口腔アレルギー外来のシステム、問題点、症例について検討する。
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会場には展示ブースが設営され、最新の歯科医療器具や情報・書籍等の展示がありました。
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