日本メタルフリー歯科学会

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第2回 学術大会


日本歯科大学生命歯学部
2010年11月28日 東京 日本歯科大学生命歯学部
九段ホールにおいて、活況のうちに行われました。

第2回メタルフリー学会開催に寄せて

学会長 鴨井久一


 歯科の修復・補綴物(装置)の変遷を辿ってみると興味深いものがあります。
50年位前に外国の某誌が「上顎前歯が突出し、金冠(開面金冠)を入れて、眼鏡をかけカメラを持った東洋人はどこの国の人か」という非常識に揶揄した見出しをみたことがありました。歯科医療は、材料の進歩と共に天然歯に似た歯、きれいな歯肉が普及し、齲蝕・歯周病は感染症の概念が明確となり大きな改革をもたらしています。
 わが国の保険医療制度では、前装冠として金銀パラジウム合金による硬質レジンが担保されており、メタルボンドポーセレン修復は、自費治療となっております。近年、ハイブリッドセラミックが登場し、生体に優しい材料として、生体調和性の良いメタルフリー修復が用いられてきました。材質の強度も改善され、審美性を重視する前歯部、咬合を主体とする臼歯部にも使用されてきました。金属材料は有限資源で、輸入為替相場の変動で材料価格も不安定で資源も限られています。古代から使用してきた鉄は不足されており、注目の中国産レアアースの輸出規制も社会情勢を混沌とさせ、金属を使用しない歯科医療へのシフトは、大きな改革となります。口腔内の金属アレルギー問題の解決も重要で、強度(咬合)と歯周組織に優しいメタルフリー材料は社会的ニーズも極めて高く、歯科医療界のみならず、産業界にも大きな改革をもたらすものと思われます。からだに優しい調和のとれた材料の出現は受給者である国民の皆様にも喜んで受け入れられると思います。
 多数の皆様の参加をお願いし、本学会が益々発展し、歯科医療界に貢献されることを切に望む次第です。

第2回日本メタルフリー歯科臨床学会学術大会の模様

第2回 学術大会講演 ジルコニアを用いたメタルフリー審美修復


シンポジウム I

土屋 覚(デントクラフト スタジオ)

審美修復技法による形態と色調

土屋 覚

デントクラフト スタジオ
 一段と進化した今日のセラミックマテリアル、その素材を有機的に補綴修復に生かすためにはテクニシャンのみならずデンティストもその特性を理論としてではなく臨床現場レベルでの充分な理解、さらに応用できる力が必要であろう。そこで今回、「メタルフリー」という切り口からみたオーラルセラミックの種類と特徴、そして適用法を実際のケースを基に考えてみたい。


坪田有志(鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座)

ファイバーポストの審美修復

坪田有志

鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座
 近15年、歯科接着の進歩により象牙質接着の信頼性は高くなり、その結果、臨床で大小様々な変革が起こった。とくに接着による補強効果から脆性材料による間接法の歯冠修復の選択肢が広がり、口腔内におけるメタルフリーが獲得できる可能性が高くなった。
 一方、失活歯の支台構造において、レジン支台構造で併用される既製ポストの一つであるファイバーポストが2003年に薬事認可を得た。それ以前、ポストが必要なケースでは、金属鋳造による支台築造か、既製金属ポスト併用レジン支台構造のみであったが、ファイバーポストの登場により支台構造の領域でもメタルフリーの獲得が実際のものとなった。今回、ファイバーポスト併用レジン支台構造の特長とその臨床例を紹介する。


五味治徳(日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座)

ファイバー補強ハイブリッドレジン修復

五味治徳

日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座
 最近のハイブリッドレジンを代表とする歯冠用コンポジットレジンは、その物性の向上によって、臼歯部クラウンへの応用が可能となり、前歯部のみならず臼歯部歯冠修復材料としても優れた物性および色調再現性、簡便な技工操作により高い臨床評価を得ている。また、コンポジットレジン単体では連結部の破損が懸念されているブリッジ部に対して、グラスファイバー補強することにより、メタルフリーブリッジが可能となり、審美性や金属アレルギー患者への対応も期待できる。さらに、MIの概念においても、最近の接着技法を駆使し、健全な歯質をできるだけ切削せずに残すといった治療法の確立も課題となる。そこで当講座では、健全歯質の削除量を最小限にとどめ、審美性も損なわずに補綴が可能と考えられるグラスファイバー補強接着ブリッジについて検討を行っている。
 本講座では、これらハイブリッドレジンとグラスファイバーの基礎と臨床についてお話したい。


特別講演

佐藤 亨(東京歯科大学 クラウンブリッジ補綴学講座)

メタルフリー審美修復の世界

佐藤 亨

東京歯科大学 クラウンブリッジ補綴学講座
 歯科補綴領域のメタルフリー修復といえば、まずポーセレンラミネートベニア修復が上げられる。これは歯質の切削量が少ないにもかかわらず、色調を大きく変える修復方として臨床応用されてきた。
 また最近はオールマイティーの歯冠修復として30年以上臨床使用されてきた陶材焼付鋳造冠に代わり、ジルコニアを使用したオールセラミッククラウン・ブリッジが使用されるようになってきた。この修復方は歯冠の形態、色調とともに咬合や口腔機能の回復も図れるメタルフリー修復法であることが大きな特徴となっている。歯科審美修復は、ただ歯の色調のみではなく、歯、歯肉、口唇との調和や、咬合や口腔機能の機能美の改善と調和を図り、口元あるいは顔の総合的な美しさを提供することにあるため、このジルコニアによるメタルフリー修復は今後需要が高まることは確実である。
 今回は、メタルフリー修復による色彩美ととおに、形態と機能からみた口腔の美についてお話をする。


シンポジウム II

新谷明喜(日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座)

接着を生かした審美修復

新谷明喜

日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座
 歯科における審美修復は、硬組織である歯質を外科処置(切削)し、バイオマテリアルによる歯冠補綴装置を接着することでなりたっている。そのため、再生する軟組織や臓器をあつかうMI(Minimal Intervention : 最小限の侵襲)とは考え方が異なってくる。
 最近のMI審美修復では、自己治癒可能なエナメル質は可及的に切削せず、切削したエナメル質や象牙質は接着剤で接着処理している。その結果、セラミックスやレジン修復のマージン変色を防止することが可能となってきた。また、審美修復装置と歯質を複合化させる接着剤を臨床応用することは、修復装置を長期間口腔内で機能させるだけでなく、歯の寿命をさらに延ばすことを期待させる。歯科治療を希望する患者さんのさらなる審美性の要求に対応するため、生体適応性と安全性に優れたオールセラミック修復による臨床が検討されている。そこで、本講座では、これら接着を生かした審美修復について話をしたい。


山田和伸(株式会社カスプデンタルサプライ/カナレテクニカルセンター)

CAD/CAMジルコニアクラウンの製作

山田和伸

株式会社カスプデンタルサプライ
カナレテクニカルセンター
 高度な審美修復には、金属を一切使用しない、いわゆるオールセラミックスが推奨され、今日ではジルコニアがその代表格として話題の中心である。しかし、長期間にわたって臨床的有効性が維持されるために必要な事柄は、コーピング自体の機械的強度が優れていることだけではない。いくつかの研究機関からは、実際の口腔内に装着されたポーセレン焼付けジルコニアクラウンに起こる破損やクラックなどの問題は皆無ではない、と報告されている。多くの場合、焼付け用のポーセレンの部分に問題が発生することから、「コーピング材であるジルコニアと焼付け用ポーセレンとの相性」、提供されたジルコニアコーピングの「切削を含めた取り扱い上の注意」に対して関心を持つべきと考える。
 今回演者は、いくつかの臨床例を通して、材料の選択理由と技工行程における注意点を考察に入れて述べてみたい。


白川正順(日本歯科大学附属病院 口腔外科)

日本歯科大学付属病院口腔アレルギー外来

白川正順

日本歯科大学附属病院 口腔外科
 当院では歯科と医科とが連携して、2010年3月1日、口腔アレルギー外来を開設した。歯科大学附属病院内で歯科と内科、皮膚科が連携して、「口腔アレルギー外来」を開設するのは全国的に見ても極めて少ない。当院の「航空アレルギー外来」は口腔外科が総窓口となり、構成については歯科は口腔外科、総合診療科の歯科医師が中軸となり、これに技工士が参画し、医科は皮膚科、内科、外科の各医師、また看護部門、薬剤部門などが密接な連携をとり、患者管理、検査試薬の管理、作成、試用等を行っている。
 口腔アレルギー外来を設置した目的は、歯科材料によって生じた口腔あるいは全身アレルギーの原因究明をし、総合的な診断から、治療までを統計的に行うためである。
 平成22年3月1日から10月30日までの8ヶ月間に来院した患者は54名(男11名、女43名)であった。今回は、当口腔アレルギー外来のシステム、問題点などについて検討する。


松村光明(東京歯科医科大学附属病院歯科アレルギー外来)

東京医科歯科大学歯科アレルギー外来

松村光明

東京歯科医科大学附属病院歯科アレルギー外来
 近年、歯科用金属やレジン、セメントなどの歯科材料が原因と疑われるアレルギー患者が増加し、当外来には歯科のみならず医科からの診断依頼の患者が多数受診されている。
 アレルギーの分類は基本的に、I型(アナフィラキシー型)、II型(組織障害型)、III型(免疫複合型)、IV型(遅延型)の4型に分けられるが、その中で歯科との関連性が高いのがI型とIV型である。
I型アレルギーは、歯科治療においては、局所麻酔薬およびそれに含有されている防腐剤や安定剤、天然ラテックスチューブ、ラバーダムなどにより、瘙痒感や蕁麻感、喘息発作、アナフィラキシーショックという重篤な過敏症を起こすことが知られている。
 一方、歯科材料、特に金属アレルギーはIV型アレルギーの代表であり、金属に触れて数時間から数日後に触れた局所や場合によっては全身に発赤、腫脹、湿疹などを生じるのが特徴である。そのため歯科金属が原因のアレルギーの臨床症状も、口腔内にとどまらず、全身に及ぶ場合も少なくない。当外来では、このI型とIV型のアレルギーを中心に診査・診断を行っている。そこで、当外来における診査・診断法および治療方法・材料について説明し、さらに、近年の受診患者の経路、疾患名、発症部位、パッチテスト・プリックテスト陽性率などについて報告する。


岩坪昤子(医療法人銀嶺会岩坪歯科医院)

開業医における歯科アレルギーの現状

岩坪昤子

医療法人銀嶺会岩坪歯科医院
 ごく最近に経験した純チタンインプラントのアレルギーを契機とし、50年の臨床医としての立場から、金属アレルギーに対する私の見解を述べたい。項目は以下のとおりである。
 金属アレルギーの経験者数。金属アレルギーの多様な症状。口腔という過酷な環境。金属アレルギーの発症率調査の必要性。金属アレルギーの検査方法。代替材料の選択。諸外国における対策は。歯科医師にたいする教育の問題。発症時の対処の方法。当院における対応策、私の提案。


会場には展示ブースが設営され、最新の歯科医療器具や情報・書籍等の展示がありました。
協賛各社展示ブース
   
   

協賛団体・企業様
イボクラール ビバデント 株式会社 シロナ デンタルシステムズ
スリーエムヘルスケア パナソニック ヘルスケア株式会社
株式会社トクヤマデンタル 株式会社 WACCORD
株式会社 日本デント 大信貿易
株式会社 松風 Z System
アドバンス クラレメディカル株式会社
和田精密歯研株式会社 株式会社 A.S.O.
一世出版 株式会社YMD

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日本メタルフリー歯科学会 2013