2019年11月16日 浦安市
明海大学浦安キャンパス

明海大学浦安キャンパス

2019年11月16日 明海大学浦安キャンパスにて行われました。

理事長 ごあいさつ 「第11回日本メタルフリー歯科学会 学術大会によせて」
一般社団法人日本メタルフリー歯科学会 理事長 本間 憲章

今秋、千葉県では台風15号の直撃に遭遇し大変な被害にあいました。東京湾に直撃という台風は、今まであまりなかったと思います。それでも起こってしまったのです。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

さて、日本メタルフリー歯科学会の会員、特に認定医であれば、金属アレルギー患者を診療したことがあるのではと思います。私の診療所でも、金属を除去して欲しいと訴える患者が年々増加しています。これは皮膚科や内科の先生方が、この学会の存在を知って認定医である先生の診療所へ紹介して下さる様になった結果ではないかと推察しています。
臨床家にとり、患者の気持ちを理解することはとても重要です。
又、皆保険制皮下のわが国では、多くの歯科医がこの枠組みの下で歯科治療を行っています。
近年、メタルフリー歯科臨床の可能な材料が保険診療の中にも多く取り入れられてきました。この事はとても喜ばしい事です。
現在、自分が使用している歯科材料・器材を用いた治療結果に対して、常に予後観察してゆくことは重要な事です。
以前、良いと言われた材料で長期的結果を診てみると、良かれと思って行った治療でも、患者の満足を得られない結果が発現・発症することがあります。
遅延型アレルギーと言われる金属アレルギーも、発症してしまったら患者も治療した歯科医も不幸です。
ですからこれからの時代、メタルフリー歯科学会の存在意義は、益々大きくなると考えております。
メタルに劣らない、身体に、より優しい歯科材料があり得るという視点に立って、さまざまな分野の学者、臨床家が集まり、情報交換する事は、これからの時代の歯科医にとっても、国民のためにも有意義な学会であると考えています。

「第11回 日本メタルフリー歯科学会学術大会」のテーマは「メタルフリー歯科の未来」です。
ここで学ぶ歯科医は、未来を見つめ一歩前に進んでいる歯科医と言えるのでは?と考えています。
この学術大会が東京ディズニーリゾートに隣接する新しい街、浦安市明海にある明海大学浦安キャンバスで行えることを、大会長をお引き受け頂きました。
明海大学歯学部病態診断治療学講座・口腔顎顔面外科学分野1嶋田淳教授、ならびに実行委員長、龍田恒康准教授、準備委員長、森一将准教授ならびに教室員皆様に心より感謝申し上げます。

大会長 ごあいさつ

第11回日本メタルフリー歯科学会学術大会
明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学分野1教授
大会長 嶋田 淳

大会長 嶋田 淳 第11回日本メタルフリー歯科学会学術大会を2019年11月16日(土)に、千葉県浦安市の明海大学浦安キャンパスにて開催させていただくことになりました。明海大学は1970年に、埼玉県坂戸市に単科の歯科大学として産声をあげましたが、1989年に千葉県浦安市明海(あけみ)に経済学部と外国語学部を開設し、稔合大学として新たなるスタートを切りました。その後は不動産学部、ホスピタリティツーリズム学部を新設し、本年からは保健医療学部歯科衛生士学科も開設し、ますます発展を遂げ現在に至っております。
明海大学浦安キャンパスは、東京ディズニーリゾートがある舞浜に隣接し、新しい息吹を感じる現在注目の発展都市です。
日本メタルフリー歯科学会学術大会をこの地で開催できることは大変光栄に思いますとともに、気の引き締まる気持ちでいっぱいです。

本学会は、金属に代わり身体により親和性に優れ、審美的な歯科材料を用いた新しい医療の発展に寄与することを目的とする新しい学会です。保存補綴材料に使用するため紀元前から金属とは長らく関わってきた歯科界ですが、近年では金属アレルギーの原因としての関わりや、貴金属価格の高騰、金属に替わる新しい素材や加工技術の進歩によって、金属を用いない歯科医療が注目されており、今後益々発展する領域を担う学術団体です。
この度11回目の開催を迎える本学術大会ですが、過去に積み上げられた業績を礎に、これからを議論する必要もあります。
そこで、今回の学術集会のテーマを「メタルフリー歯科の未来」としました。

超高齢化社会を迎え、医科歯科連携や高齢者・有病者歯科がより一層重要となり、歯科医学・歯科医療の重要性が高まり、医学における歯科の立ち位置の重要な変革点にある今、本学術大会のテーマである「メタルフリー歯科の未来」をこの機会にクローズアップすることにより、歯科医学のこれからが望めることを期待しております。

理事長講演

メタルフリー インプラントの現況
一般社団法人日本メタルフリー歯科学会理事長
(医)本間歯科理事長
本間 憲章

理事長講演

現代の歯科治療においてメタルフリー歯科を推進するにあたり、避けて通れない疑問は、インプラント処置であろうと考えます。
一昔前まで、チタンインプラントは”アレルギーがない”、”少ない”と言われてきました。
しかし 最近では チタン製インプラントの金属には、「微量ではあるがニッケル等、金属アレルギーの発症原因となることが明白な金属が含まれている」事も知られるようになりました。
もはやインプラントもメタルフリーを必要とする患者が多くなる時代になっている事も認識しなければならないでしょう。

インプラントの歴史を考えてみますと、さまざまな素材によりインプラントは製造販売されてきましたが、今では世界で約280社以上とも言われるインプラントメーカーが存在する現実、これらは 実に急速に普及したものであり、歯科医療には避けて通れない治療技術にまでなったことは否定できないでしょう。

私は、審美歯科を学び、自らの臨床にも心がけてから、メタルフリー歯科を推進したいという気持ちで、インプラントでも国外に目を向けてみました。
そして、当時から欧州・米国ではジルコニアインプラントの存在を知り、金属アレルギーの患者又はそれを危倶する患者に応用を開始致しました。
早いもので既に10年を経て、症例数も増え、さまざまな場所で発表させて頂きました。
マスコミ等で金属アレルギーの存在を知った国民は増加の一途をたどっています。
同時に、日本の歯科医にとっては、必要、又は希望する患者が増えてきた事も事実であると推察しています。

私が応用してきた症例を報告すると同時に、このような時代背景のもとで既存のチタンインプラントメーカーは、どのように研究開発しているのか、メタルフリーインプラントは、どのような広がりを見せてきているのかを、最近知り得た情報をもとに紹介してみたいと思います。

特別講演 1

歯科と連携する皮膚疾患
東京歯科大学市川総合病院皮膚科
高橋 慎一

高橋 慎一

皮膚科医が歯科医と連携する必要がある病態は以下の3つに分類される。

第一は口腔粘膜に病変を生じる皮膚疾患である。粘膜病変としては帯状庖疹、カンジダ症などの感染症、天痕癒や粘膜類天痘瘡と扁平苔癖、ステイープンス・ジョンソン症候群などがある。
この場合は皮膚科医と歯科医が協力して原疾患の診断を行う。その上で皮膚科医が主として全身療法を・歯科医が局所治療を行う。

第二は歯性感継が関与する皮膚疾患である。
そのうち歯性感染症が直接病変を形成するのが外歯痩や重篤な眼窩蜂窩織炎などである。
一方、歯性感染症が病巣感染の原発巣となり、二次疾患として間接的に誘発される皮膚疾患には掌蹠膿疱症、肉芽腫性口唇炎などがある。この場合は。まず皮膚科医が原疾患を診断し、治療の1つとして、歯科医に積極的な歯性感染症の治療を依頼する。そして歯科治療が皮膚疾患の病状軽快に寄与しているか、皮膚科医が経時的に検証する。

第三は、麻酔薬、抗生剤、鎮痛薬などの治療薬や金属やレジンなどの歯科用材料などにより生じる皮膚粘膜疾患である。前者は一種の薬疹であり、特に局麻薬が問題となることがある。後者では歯科材料が直接口腔粘膜に作用する病態として接触性口内炎,口唇炎や口囲皮膚炎があげられる。一方、歯科材料が全身型金属アレルギーを生じると、口腔より離れた部位に病変を生じる異汗性湿疹、扁平苔癬などの疾患が報告されている。この場合はまず皮膚科医が原疾患を診断し、パッチテストで金属アレルギーを証明する。その上で歯科医が口腔内にアレルギーのある金属が使用されているか精査する。原因の可能性のある歯科材料が口腔内に使用されている場合、皮膚科医と歯科医が金属除去を施行すべきか判断する。
金属除去後、皮膚科医は原疾患が軽快するかを経時的に評価し、歯科医はアレルギーを生じない材料で修復を行う。

本講演ではこれら3つの病態について、実例をあげながら解説する。

講演風景 1

特別講演 2

歯科治療に関わるアレルギーについて
藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギー科
鈴木加余子

鈴木加余子 アレルギー症状は大きく即時型アレルギーと遅延型アレルギーに分けられる。

歯科治療に関わる遅延型アレルギーと言われてすぐに頭に浮かぶのは金属アレルギーであり、実際、掌蹠膿疱症や全身型金属アレルギーなど歯科金属と関係した皮膚疾患が報告されている。
しかしながら、歯科治療後の口腔内違和感や舌痛症などの症状は、金属だけでなく、歯科材料中の合成樹脂によるアレルギーにより生じることも報告されている。

歯科材料には、2-hydoxymethacrylateやmethylmethacrylateなどの合成樹脂が使用されている。これらの合成樹脂は、これまで医療材料や歯科材料、趣味の工作用接着剤、工業用接着剤などのみに配合され、接触機会は限られていたが、近年マニキュアにかわって大流行している爪化粧料のジェルネイル、アクリルネイルにも配合されており、一般女性が接する機会が増えている。
ジェルネイルは、自宅で簡単にできるキットが販売され、自分で施術した際に爪周囲の皮膚にジェルネイルが付着したり、不十分な硬化状態の合成樹脂を装着することによって感作された症例が増えている。
一方、歯科の先生方が多く経験される即時型アレルギーに局所麻酔薬投与後のさまざまな症状がある。そのような症状を「局所麻酔薬のアレルギー」と訴えて、当科に精査希望で受診される患者さんに、生じた症状を具体的に聴くと動惇やめまい、手のしびれなどであり、即時型アレルギーと思われる全身の寺麻疹やアナフィラキシーのことは少ない。

本講演では、このような歯科治療後のアレルギーについて、当科での経験症例や皮膚テストの方法(パッチテスト、プリックテスト)のすすめ方について述べる。講演風景

指名講演

歯科に応用される骨補填刑の開発とその応用展開
国立研究開発法人物質・材料研究機構
バイオセラミックスグループ
菊池 正紀

菊池 正紀

緒言:これまで演者らは、ネオボーンやリフィットなど、骨を自らの力で再生する材料の開発を進めてきた。

本発表ではリフィットの元になった水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体(HAp/Col)の研究からその応用開発に至るまでを概説する。

HAp/Col複合体1):HAp/ColはHApのナノ結晶とコラーゲンの分子が骨と同様に配向した構造となっている。これを多孔体としたものがリフィットであり、湿潤状態ではスポンジ状の粘弾性を示す特異な材料である。そのため、潰したり戻したりして気孔内に血液などの液体を導入することができ、骨欠損部に材料を詰め込む時にも、欠損部内で材料の形状が復元しようとし、不定形の欠損部であっても、欠損部断面と材料が密着しやすい。細胞培養試験では骨形成因子添加の有無にかかわらず、MG-63の骨芽細胞活性が培養皿より3倍以上高いことが明らかになった。また、骨芽細胞と骨髄細胞の共培養による破骨細胞誘導試験では、誘導因子無しに破骨細胞を誘導することが明らかとなった。

HAp/Colは完全に骨リモデノングに取り込まれて優れた骨再生効果を示す1)。治験の結果、骨との一体化/骨への吸収置換について、オスフェリオンと比較して20%以上有効性が高かった。
HAp/Colコーティング:東京医科歯科大学と共同でTiへのHAp/Colコーティングが骨膜下でのオッセオインテグレーション(0Ⅰ)を3倍早くするという結果を得た3)。現在、アンカーポストなどへの応用研究を進めているが、ジルコニアなどチタンに比して0Ⅰに不利な材料の0Ⅰ速度向上にも応用可能であると考えている。
HAp/Colペースト:シランカップリング剤を利用してペースト状人工骨の作製に成功した。動物実験の結果、生体為害性は無く、3か月以内に骨に置換されることがわかった4)。

参考文献
1)Kikuchi M et al.Biomater,22,1705,2001.
2)四宮謙一 他,整形外科,63,921,2012.
3)Uezono M et al,J Biomed Mater Res B:Appl Biomater,101B,1031,2013.
4)Sato T et al.,J Asia nCeram Soc,DOI:10.1080/21870764.2018.1517712,2018.

講演風景 2

臨床セミナー講演

レーザー処理によるジルコニアインプラント体の表面処理の効果について
福岡歯科大学岐合修復学講座口腔インプラント学分野
城戸 寛史

城戸 寛史

ジルコニアは審美的な色調と優れた生体親和性があるため、すでに歯科領域における修復材料として広く使用されている。インプラント治療においては、アバットメントや上部構造の材料として多くのシステムで採用されており、不可欠な材料の一つといえる。ジルコニアは上部構造関連のだけでなくインプラント体の材料としても魅力的である。インプラント周囲組織の萎縮や吸収によって、インプラント体の一部が露出しても、チタン製インプラントのような、いわゆるブラックラインとなることがなく、長期経過において審美的に有利である。また、チタンに対するアレルギーまたは過敏症と思われる症例について、いくつかの報告があり、チタン以外の選択肢の重要性が指摘されている。

ジルコニア製インプラントは、すでに海外の一部の業者から利用することができ、チタン製インプラントに匹敵する臨床成績が報告されている。今後多くのインプラントシステムがジルコニア製インプラントを製品ラインアップに取り入れると思われる。
チタン製インプラントの表面性状は長年にわたり多くの研究者によって検討され、現在、ほとんどのシステムが中等度の租さの表面性状を採用している。しかし、ジルコニアインプラントの表面性状についての基礎研究は多くない。
レーザー照射によるジルコニア表面の祖面化は、インプラント体表面を汚染することなく、短時間で処理を行うことができるため安全性が高い。そこでジルコニア表面にYAGレーザーとファイバーレーザーを用いてさまざまなレーザー処理を施行し、invitroおよびinvivoで有用性を検討したので、詳細を解説する。また、チタンと比較してジルコニアは弾性係数が大きいためインプラント体と使用した場合、岐合力が加わったときに周囲骨に応力が集中しやすいと考えられる。
そこでピーグル犬にジルコニアインプラントを埋入し、上部構造を装着して12か月機能後に周囲骨の反応を観察したので結果について解説する。

一般口演抄録 1

メタルフリーの治療
松森歯科クリニック
○松森 広泰

松森 広泰

抄録:この度、メタルフリーを目的として感染根管処置歯にファイバーポストにて築造、その後支台歯形成、印象、セットをマイクロスコープ下にて情報を患者と共有しながら治療させて頂いたケースを御供覧させていただきます。

患者情報:患者 KF様 昭和35年生 女性
・主  訴 右下奥歯が気になる
・歯科的既往歴 右下奥歯がたまに違和感を感じる 矯正治療済み
・全身状態 問題なし
・顎関節 問題なし
・性  格 真面目 凡帳面
・ノンスモーカー
・経済的背景 協力的
右下6番の補綴物の再治療を行うにあたり、近心に骨吸収が認められた為に、歯周再生療法を施し、ファイバーコア築造、セラミックにて最終補綴を行い5年経過症例をご供覧させていただきます。

一般口演抄録 2

愛知県における歯科・皮膚科連携の取り組み
1)愛知学院大学歯学部高齢者歯科学
2)愛知学院大学歯学部冠・橋義歯学講座
3)愛知学院大学歯学部在宅歯科医療寄附講座
4)愛知学院大学歯学部附属病院 口腔金属アレルギー外来
○池戸 泉美1・4),竹市 卓郎2,4),服部 正巳3)

池戸 泉美

近年、歯科材料が原因となるアレルギー疾患の報告が見受けられる。とくに金属アレルギーにおいては皮膚科医との連携が不可欠である。しかしどのように連携を行ったらよいのか苦慮しているのが実情である。
われわれは愛知県歯科医師会と愛知県皮膚科医会の後援のもとに歯科・皮膚科ワークショップを開催し、講義とグループディスカッションを行った。またアンケート調査をワークショップ開催前と開催3か月ごと行った。今回、グループディスカッションの主な議論の内容とアンケートについて報告を行う。

講演者表彰

講演者表彰講演者表彰講演者表彰講演者表彰講演者表彰

展示ブース

展示ブース 展示ブース 展示ブース 展示ブース

協賛団体・企業様

  • 科研製薬株式会社 東京支店 学術部
  • 株式会社成田デンタル
  • 大信貿易株式会社
  • Z-SYSTEMSAG
  • 株式会社ジーシー
  • 株式会社モリタ
  • 株式会社ヨシダ
  • 株式会社ビープランド・メデイコーデンタル