2014年11月23日 東京
東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科外来棟

大会会場風景 会場エントランス風景大会会場風景

4階特別講堂において、活況のうちに行われました。

第6回 日本メタルフリー歯科学会 学術大会に寄せて
日本メタルフリー歯科学会 理事長
本間 憲章

今年は・台風・大雨被害・御嶽山の噴火・地震等、自然災害の多い年でありました。不運にも、それらで被災された方々に、心よりお悔やみ、お見舞い申し上げます。未だ経験したことのないような大雨 という言葉も良く耳にしました。
およそ人間は体験する事、又経験した人の話、情報、データ等から学ぶと言っても過言ではないでしょう。それが経験したことがないと言われると、恐怖心も大きくなります。
我々の分野でも、常に経験者の話や著書に注目する事が重要なことは誰もが認める事だと思います。情報が多岐に渡り、いわば見過ごしてしまう可能性がある事も認めざるを得ない事です。
臨床家にとって、次から次へと誕生する材料・器材 技術・情報を理解してゆくことは、なかなか大変な事です。しかし 現在自分が使用している材料・器材を用いた治療結果に対して、常に予後観察してゆくことは重要な事だと思います。以前 良いと言われた材料で、長期的結果を見てみると、良かれと思って行った治療でも、患者の満足を得られない結果が発現・発症することがあります。想定外という言葉がしばしば使用される事も多い昨今ですが、我々は 患者の心を理解し、常に自分の行った治療結果に責任を持つように心掛けなければ、患者は去ってゆくことでしょう。

この学会では、臨床家にとっては、今後、更に大切な審美歯科分野・歯科材料・金属アレルギーの諸問題を様々な角度から学び、臨床家にとって明日からの治療に生かせる治療法・体に優しい材料・技術を知る学会、学術大会であると思います。
今年、第6回学術大会を、昨年同様 ここ御茶ノ水 東京医科歯科大学歯学部で行われますことは、非常にうれしく、意義深いことであると思います。
大会長 摂食機能保存学分野 三浦宏之教授は、セラミック修復(メタルフリー修復)の我が国の権威であります。昨年の大会長 歯科アレルギー外来 松村光明教授、更に、う蝕制御学分野の田上順次教授、共に長年の豊富な学識・ご経験からメタルフリー歯科の重要性を、ご参加の皆様に、ご指導ご教示して下さることでしょう。

最後に、大会長 三浦宏之教授、並びに準備委貞長 進千春先生 及び教室貞諸先生各位に心より感謝御礼申し上げます。更に学術大会にご協力を賜りました協賛企業、関係各位にも感謝・御礼申し上げます。

学術大会長挨拶
第6回日本メタルフリー歯科学会学術大会 大会長
三浦 宏之

第6回メタルフリー歯科学会学術大会を平成26年11月24日(月)に東京医科歯科大学M&Dタワー2階鈴木章夫記念講堂にて開催させていただきます。

シンポジウム1として松村光明先生に「歯科材料アレルギーで発症したと思われるトラブル症例について」、池戸泉美先生、服部正巳先生に「歯科用金属による金属アレルギーを疑った患者の疫学的調査」、本間憲章先生に「メタルフリーインプラントについて最新情報」をお話いただき、歯科アレルギー、インプラントにおけるメタルフリー修復についてそれぞれの立場からディスカッションを行いたいと思います。
シンポジウム2では田上順次先生に「審美修復:直接法か間接法か」、宮崎真至先生に「コンポジットレジンを用いた修復テクニックの実際」、末瀬一彦先生に「CAD/CAMテクノロジーを用いた審美修復治療の現状」と題して、保存、補綴それぞれの立場から最新の審美修復、メタルフリー修復についてお話をいただきます。
ランチョンセミナーでは、沖汐和彦氏に「レジン系材料の接着とメタルフリー修復への新たな提案」について、古川進氏に「メタルフリー修復における素材選択とソリューションについて」と題して講演をしていただきます。

近年、患者さんの審美的な要求やアレルギ一回避等の観点から、メタルフリー修復に高い関心が集まっており、様々な材料、加工法の開発や接着術式の発展と相まって、保存、補綴、インプラントなどすでに多くの臨床に取り入れられるようになってきました。今回の学術大会では、それぞれの専門分野の先生方にご講演をいただき、活発なディスカッションが行われるものと思われます。

日本メタルフリー歯科学会は平成21年8月に歯科医療の発展的展望は身体的な面ばかりではなく、審美的な面からも“メタルに劣らない、身体により親和性に優れ、しかも審美的な歯科材料”があり得るという視点に立って、多くの議論を戦わす場が必要であるとの趣意で設立された学会であり、今回第6回の学術大会の大会長の大役を仰せつかり大変光栄に存じます。

教室員一同第6回学術大会が盛会に開催されますように、精一杯の準備をさせていただきました。皆様のご参加を心よりお待ちいたしております。

第6回 日本メタルフリー歯科学会 学術大会講演
シンポジウム I

歯科材料アレルギーで発症したと思われるトラブル症例について
松村 光明
東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科アレルギー外来

講演者 松村光明先生 金属アレルギーと審美修復の観点から、近年ではフルキャストクラウンやメタルセラミックスクラウンからメタルフリーのオールセラミックスクラウンを多用するという大きな転換期を迎えています。保険の世界もCAD/CAMによるハイブリッドレジンクラウンが小臼歯に認められるようになりました。歯冠修復材料のみならず、欠損補綴材料として歯科医療分野では従来から、金属が広く用いられています。金属材料は適合性、強度など非常に優れた物性を有しており、適応範囲が広く、長期予後に優れ、現在なお歯科医療の現場においては非常に重要な役割を担っていますが、一方で歯肉や歯根の変色、歯根破折、金属アレルギーなどが問題視されています。口腔内にて溶出した金属や、食品中に微量に含有される金属成分が経口、経管、経気道的に摂取され、血流に乗り様々な部位にアレルギー症状を引き起こします。アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、難治性痒疹といった疾患が全身性に生じ、その悪化因子として金属アレルギーが示唆される報告が多く見られるようになっています。

歯科界に留まらず、医療界においては整形外科領域や血管外科領域では人工生体材料としてステンレス製の血管拡張用バルーンやチTi合金製の動脈癌クリップ、純Ti・Ti合金及びCo-Cr合金を併用した人工股関節などが生体に用いられます。歯科領域ではチタン系金属材料を用いたインプラントや外科手術後の固定用金属プレートが、使用中に不具合を生じなければ半永久的に生体内に留置されることになります。歯科材料アレルギーが注目されていなかった時代、安全であると考えられていた治療法及びその使用材料に起因する思わぬ医原性の発病として捉えるのであれば、適切な検査法でのアレルギーの診断がなされてしかるべきと考えます。東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科アレルギー外来では歯科に限らない各医療分野からの依頗を受け、金属パッチテストや、現代セラミックス治療では必須となったレジン系高分子複合材料のアレルギー検査や、リンパ球刺激試験(血液検査)、口腔内金属成分分析検査などのアレルギー検査をもとに総括的診断を行なっています。

本講演では「歯科材料アレルギーで発症したと思われるトラブル症例について」と題し、歯科用金属やセメント、レジン、根管治療材料など、多岐に渡る歯科材料アレルギートラブルについて供覧した上で、最先端のメタルフリー・トリートメントに、身体への優しさを加えたアレルゲンフリー・トリートメントのあり方を皆様と共に考えたいと思っております。

略 歴
東京医科歯科大学歯学部附属病院
歯科アレルギー外来 臨床教授
医療法人社団優恒会 松村歯科医院
理事長/院長(東京医科歯科大学 臨床研修施設指定)

1954年 京都府出身
1980年 東京医科歯科大学歯学部卒業同第2歯科補綴学教室入局
1987年 同第2歯科補綴学大学院卒業
1990年 医療法人社団優恒会松村歯科医院開設(世田谷区)
東京医科歯科大学第2歯科補綴学教室非常勤講師
1997年 日本歯科補綴学会認定医・指導医
1999年 東京医科歯科大学歯学部歯科アレルギー外来臨床教授

歯科用金属による金属アレルギーを疑った患者の疫学的調査
池戸 泉美・服部 正巳
愛知学院大学歯学部高齢者歯科学講座
愛知学院大学附属病院口腔金属アレルギー外来

講演者 池戸泉美先生 我々の生活環境中の金属は、近年著しく種類も量も増加している。若年者の間ではピアス等の装飾品の流行により、金属に対する感作陽性率が増大し、アレルギー性接触皮膚炎が多くみられるようになった。接触アレルゲンとしての金属の中で感作陽性率の高いものはNi・Co・Cr・Hgである。
金属に感作された患者に歯科治療で金属製の修復物が口腔内に装着された場合、その修復物が原因となった金属アレルギーの症状を呈することがある。口腔内の金属が原因で皮疹を生じたとの報告は1928年のFleischmannが最初とされている。これは、Hgによる口内炎と肛門周囲炎であった。この報告以降、歯科用金属の全てにおいて金属アレルギーの報告がある。
一方、我が国において1974年に中山らが掌蹠膿疱症の原因が歯科用金属と思われるとの報告を行い、歯科用金属から溶出した金属イオンが原因と考えられる皮膚を「歯科金属疹」と呼称することを提唱している。また、職業によっては特殊な金属に高い感作陽性率を示すことがあり、美容師や理容師がパーマ液中のNiに感作されることなどが報告されていることや、金属研磨作業員がCoの金属粉塵を浴びて感作されることなどがある。
医療分野においては近年歯科用インプラントによる金属アレルギーの報告や整形外科領域における人工関節置換術後の皮膚疾患の出現などが報告されている。
このように、金属アレルギー患者が増加する状況の中、多数の口腔金属アレルギー患者を対象に検討した報告はない。今回、歯科用金属が原因で何らかの症状を訴えている患者、もしくは不安があり来院した患者の動態を把握する目的で2001年1月より、2008年12月までに来院した患者について臨床統計学的に検討を行い、以下の結論を得たので報告を行う。

女性の受診者は男性の4倍であり、感作陽性率は男性54.5%、女性59.1%であった。
来院時の臨床診断名で口腔外に症状の出現した患者では掌蹠膿疱症が最も多かった。
口腔内に症状が出現した患者では扁平苔癬が最も多かった。
金属元素別の感作陽性率はパラジウム、ニッケル、コバルト、スズ、クロム、金の順であった。また、パラジウム、ニッケル、コバルトの同時感作が多く認められた。
男女別の感作陽性率は銅と銀の両金属で有意に女性の感作陽性者が高かった。

今回の調査より、金属を用いて修復を行う際には過去に全身的あるいは、局所的に金属における皮膚症状にてトラブルがなかったか等の詳細問診を行い、皮膚科医と連携し原因金属の特定を行い、原因となる金属を使用しない、もしくはメタルフリー歯科治療を行うなど十分な配慮が必要であることが言える。また、歯科領域ばかりでなく、医科領域においても金属の使用が多様化してきているため、その指標となると考える。

略 歴
平成 9年 愛知学院大学歯学部卒業
平成10年 愛知学院大学歯学部補綴科入局
平成12年 日本補綴歯科学会会員
平成13年 愛知学院大学歯学部附属病院口腔金属アレルギー外来医員
平成12年 東京医科歯科大学歯学部附属病院医員
平成23年 博士(歯学)の学位取得
平成24年 日本メタルフリー歯科学会理事
平成25年 日本メタルフリー歯科学会認定医

メタルフリーインプラントについての最新情報
本間 憲章
医療法人本間歯科理事長

講演者 本間憲章先生 メタルフリー歯科を患者に推奨する時に、一番問題になったのは、インプラントであろう。現在我が国で、インプラントと言えば、歯科医は誰しもがチタン製インプラントであると認識している。そしてチタンはアレルギーがない、少ないとされてきた。しかし、近年チタンもアレルギーを発症するという報告が国内でもなされて、当時その論文の内容に、私自身驚いたのである。そうだやはりチタンも金属であったのだと思い知らされた。そして大きな時代の変化が起こる気がしたのである。そこで世界に目を向けてみると、メタルフリーインプラントが存在していた。多くはベンチャー企業であるため、大企業に成長した既存のチタン製インプラントメーカーの陰に隠れている。更に、セラミックはその製造方法により強度に各社バラツキがあり、消えてゆくメーカーもある。その中でもスイス製セラミックインプラント(ジルコニア製)に、近年充分信頼にたるものが存在する。既にEUやFDAの認可を取得し、欧米では一部の歯科医に支持を得て、確実に実績を上げているのだ。

私も臨床に応用し、既に5年が経過し、金属アレルギーの患者、又それを危倶する患者に大変喜ばれている。私は昨年この学術大会で、その紹介をさせて頂いた。今回はその続編ともいうべき内容である。更に今年、フロリダで行われた第1回国際セラミックインプラント学会で得た内容・情報も報告したいと思う。

もはやマスコミ等で報道された金属アレルギーの問題は、国民に様々な不安を抱かせつつある。もし既存のインプラントを薦めた患者に、「金属アレルギーの心配はないのか」と質問を受けたら、大丈夫ですとは、言っていられない時代になった事を認識してほしい。私はチタン製インプラントを否定するのではない。そのような患者に選択肢として、セラミックインプラントの存在を教示できるようになってほしいと感じるのである。

私はガソリンエンジン車から電気自動車又は水素エネルギー車の流れの変化のように、歯科インプラントの世界でも、大きな時代の変化が起こるような気がするのである。それは金属アレルギーを知れば、患者が求めるものは何かという事を、長年の町医者生活から直感しているからに他ならない。

略 歴
日本歯科大学 卒業
東京女子医科大学病院歯科口腔外科入局
村瀬正雄教授 河西一秀教授に師事
東邦医科大学医学部薬理学教室特別研究員 伊藤隆太教授に師事
米国 University of Michigan 留学
渡加 McGill University・Montreal General Hospital 勤務
帰国後 干葉市内開業
現在医療法人本間歯科理事長・医療法人干寿会理事
lCOl国際インプラント学会 アジア太平洋地区認定医審査委員
日本顎顔面インプラント学会 運営審議委員
国際歯科学士会 Fellow
暁星歯学会会長
日本歯科大学 非常勤講師・臨床講師
医学博士

ランチョンセミナー

レジン系材料の接着とメタルフリー修復への新たな提案
沖汐 和彦
株式会社トクヤマデンタル つくば研究所

ランチョンセミナー風景 CAD/CAM用レジンブロックが小臼歯の歯冠用材料として保険収載されるなど、メタルフリー修復におけるレジン系材料の適用範囲は、その性能の向上と共に広がりをみせている。従来、レジン系材料はその性質としてレジン自体の強度や耐久性がセラミックス等と比較すると課題となっていた。しかし、近年ではフィラーの粒子設計や,レジンを硬化させる重合開始剤などの改善によって強度や耐久性も向上している.また,過酷な口腔内環境での耐久性には、接着性も重要な要素であるが、接着剤の進歩によって接着性能の向上だけでなく操作性についても簡便化が進んでいる。レジン系材料はその特性として、保存的治療や即時的な治療に適しており、材料の中では比較的歯質に近い物性を有しているため対合歯の摩耗や歯根破折を抑制する観点からも、臨床上の有効な選択肢のひとつとなるものであると考えている。今後も、さらに性能が向上すれば臨床における適用範囲は拡大するものと思われる。

トクヤマデンタルでは、新たなメタルフリー修復への提案として化学重合型のボンディング材である「エステリンク」とレジン系の支台築造材料である「エステコア」の開発を行った。「エステリンク」はシンプルな操作で多様なレジン系材料に使用できるボンディング材であり、「エステコア」は象牙質に近い物性と操作し易い性状をコンセプトとしている。さらに、ジルコニアやファイバーポストなどさまざまな素材の前処理に使用できる「ユニバーサルプライマー」と併用することで、多目的に使用できるシステムとなっている。これらの製品とともに、レジン系材料によるメタルフリー修復への弊社の取り組みを紹介する。

略 歴
2007年 創価大学大学院工学研究科 生命情報工学専攻卒業
2007年~現在 株式会社トクヤマデンタルつくば研究所

メタルフリー修復における素材選択とソリューションについて
古川 進
デンツプライ三金株式会社営業企画本部
デジタルソリューショングループ

ランチョンセミナー風景 2005年に日本で初めて、ジルコニアを素材とするCERCONシステムが登場し、その後、各社からCAD/CAM装置、材料の販売が開始され急速に普及いたしました。強度、審美性、生体新口性を兼ね備えたジルコニアの登場により、歯冠修復の分野においてメタルフリー化への大きな分岐点となったと思います。近年、さらにCAD/CAMの最新技術が次々に開発され、臨床での応用範囲は、クラウンブリッジからインプラント、義歯の分野まで広がっており、メタルフリーのための様々な機器・材料は日々進歩しております。また、保険分野においては、本年の4月度からCAD/CAMレジンブロックによる小臼歯部のクラウン補綴が保険収載されましたが、前歯、大臼歯部のメタルフリー修復においては、素材強度や材料の保険適用外によりほとんど活用されていないのが現状です。デンツプライ三金ではメタルフリー修復による、高強度歯冠修復用硬質レジン「ミヤビ」の開発を進め、本年9月1日より販売を開始いたしました。(前歯・小臼歯の保険適用、単冠のみ)「ミヤビ」はレジンペーストの築盛および専用光重合器のエンテラによる光重合のみで220MPAの高い曲げ強度を有するだけではなく、産業ビジョンによる新素材開発ワーキンググループからの指針、「クラウンの具備すべき性質項目および目標値」の圧縮強度・硬度・耐摩耗性・吸水性等の設定値を全て上回った材料です。そこで今回は、患者様の様々なニーズに合わせた素材選択のソリューションとして、自費診療、保険診療での応用と対応部位における、セルコンZ冠・セルトラDUO、ミヤビをご紹介いたします。

略 歴
1981年 東邦歯科技工専門学校 卒業
1983年 東邦歯科技工専門学校 鋳造床科卒業
1991年 三金工業株式会社
2010年 株式会社 三金ラボラトリー
2014年 デンツプライ三金株式会社

シンポジウム II

審美修復:直接法か間接法か
田上 順次
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野

講演者 田上順次先生 審美修復材料として、コンポジットレジン材料とセラミックス材料が広く用いられてきたが、近年ジルコニアも急速に普及している。ジルコニアもセラミックスも間接法修復材料であるが、コンポジットレジンに関しては、直接法と間接法という選択肢がある。一般論として間接法では、形態の回復が容易で、大型の修復に適するということが利点として挙げられている。しかしながら、大型の修復でも形態の回復が可能でさえあれば、患者にとって直接法の方が良いことは当然である。ジルコニアなど機械的強度に優れた素材は、直接法で用いることは不可能である。どうしてもこのような素材による修復が必要な状況では、当然間接法が選択されることになる。
材料の選択に際しては、術者の考え方によるところが最も大きいので、どちらが良いとか優れているとかという問題ではなくなってきていると思われる。近年、直接法による大型のコンポジットレジンの修復を積極的に行う臨床家が増えてきているのは、材料の進歩により、審美性や強度に優れた材料が開発されたこと、そしてそれらを直接法で行うための手法や器具が開発されてきたことによる。

こうした材料や手法の違いが注目を集めているが、歯の修復処置にも低侵襲という概念が適用されるようになると、間接法よりも直接法が優先されるのは当然の流れである。修復物の寿命を考える際にも、材料の物性が議論されることが多いが、修復物を歯と材料の複合体と考えれば、残存歯質の量や、歯自体の寿命を考えた修復という視点が必要ではないだろうか。

以上のような考察を展開するには現在のところ、残念ながらエビデンスは極めて希薄である。演者の臨床では、直接法を中心に考えている。それは、歯質保存的で非侵襲的な処置が可能であることが一番の理由である。そのためには、臨床家として直接法で少しでも高品質別参復を、少しでも短い時間で提供できるような工夫と技術の向上が必要である。さらに重要姻由として、1回で治療が完了することが患者にとっては非常に喜ばれるという、極めて単純かつ根源的綿実である。我々の常識が、患者にとっては決して好ましいものばかりでかことを今一度考えることも必要ではないだろうか。臼歯の修復が金属があたり前であった時代に、それは患者があきらめて受け入れていたもので、決して喜んで受け入れていたものではなかったのと同じである。

略 歴
1980年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1984年 同大学院修了(歯学博士
1994年 奥羽大学教授
1995年 東京医科歯科大学教授
2000年 同大学院教授
2005年 同歯学部長(2014年まで)
2014年 同理事・副学長

コンポジットレジンを用いた修復テクニックの実際
宮崎 真至
日本大学歯学部保存学教室修復学講座

講演者 宮崎真至先生 最近の接着システム開発において、各メーカーは操作ステップを省略する方向に製品開発のターゲットを絞るようになった。すなわち、より少ない臨床操作ステップで、高い初期接着強さとともに安定した接着耐久性を獲得し、さらに齢蝕反応象牙質に対しても健全象牙質のそれと同等の接着性を示すことである。今日市販されている接着システムとしの主流は、エッチング、プライミングそしてボンディング材の機能をすべて併せ持った接着材として、Single-Step Self-etch system 製品が開発、臨床応用されている。

光重合型レジンは、とくに可視光線重合型レジンの開発以来、その操作性が簡便であるという理由から、修復処置の主流となっている。マトリックスレジンのモノマー組成はレジンペーストの操作性、光の屈折率・吸水性あるいは重合収縮などに影響をおよぼすことから、各メーカーともフィラーとの最適な混合比でペーストの調整を行う努力をしている。光重合型コンポジットレジンの色調適合性は、コンポジットレジンの半透明性ぉよび重合不均一性が重要な役割をはたしている・半透明材料の見え方の特徴としては修復物からの各反射光が複雑に関与している。すなわち、コンポジットレジンに入射した光は、反射光として視覚として認識される。すなわち、鏡面反射光、表面、層内および背景からの拡散反射光が絡み合い透明性に変化を付ける。最近では、ペーストの流れを重要視したフロアブルレジンが多数市販され、くさび状欠損や咬合面小窩裂溝参復に留まらず、臼歯部の大型窩洞修復に用いることが可能となっている。

これらの修復システムを用いて、審美性の高い修復をレイヤリンリングテクニックによって行うためには、対象となる歯の色ならびに解剖学的形態を観察する。歯の色調を視覚的に捉えるにあたっては、これをさらにhue(color;色調)、Chroma(intensity of color;色相)そしてvalue(brightness of color;明度)とに分けて考える必要がある.光重合型レジンの充填に際しては・これが歯質と同様な色調を有しながらも半透明性であるという特性から、材料表面、内部および背景からの反射光の影響も十分に考慮する必要がある。また、レイヤリング時の各レジン層間の接着性あるいは気泡の巻き込みなどに注意するとともに、丁寧な形態修正および最終研磨によって、機能的審美性修復が可能となる。

本講演では、大きな話題となっているコンポジットレジンを用いた歯冠修復について、接着性レジンに関する基礎的事項ならびにその臨床応用テクニックについて、「接着」と「審美」とをキーワードとして解説を加える予定である。講演では審美性の高いレ歯冠修復に必要な理論と実践を、バランスよく理解できることを主眼として構成する予定であり、臨床に反映できる知識とテクニックが必ず身につくことを到達目標とし、明日からの臨床に役立つヒントをお伝えする予定である。

略 歴
昭和62年 日本大学歯学部卒業
平成 3年 日本大学大学院修了,博士(歯学)
平成 3年 日本大学助手(歯学部保存学教室修復学講座)
平成 6年 米国インディアナ州立大学歯学部留学(平成8年まで)
平成15年 日本大学講師(歯学部保存字数室修復学講座)
平成173年 日本大学教授(歯学部保存学教室修復学講座)
平成26年 日本大学歯学部付属歯科病院長
現在に至る

CAD/CAMテクノロジーを用いた審美修復治療の現状
末瀬 一彦
大阪歯科大学歯科審美学室

講演者 末瀬一彦先生 医療においてデジタル技術は革新的な役割を担い、健康福祉の増進や疾痛の治療に偉大な貢献がなされてきた。歯科医療においてもデジタルイノベーションは単なる歯科医療技術の向上だけでなく、歯科医療のワークフローを根本的に変化させつつある。たとえばインプラント治療は欠損修復法の一つとして安全で、安心して国民に提供できるようになったのは診査・診断から埋入、上部構造の製作に至る一連のプロセスにデジタル化が取り込まれたからであり、さらに日々の診療において患者の情報管理にデジタル化なくしてあり得ない状況である。デジタル化によって、患者サイドでは侵襲の少ない治療が可能であり、治療時間が短縮され、安全、安心な治療を受診でき、治療費においても適正な価格になっていくであろう。歯科医師サイドにおいては、診断力がアップし、治療に対するストレスが軽減され、治療効果の予知性も向上する。さらに歯科技工サイドにおいては、作業環境が改善され、生産性が向上し、高品質な補綴装置を安定的に供給することができる。

歯科医療におけるデジタル化のなかでも最も注目すべきはCAD/CAMテクノロジーの導入であろう。欧米において1970年代後半から、日本においても1980年代後半からCAD/CAMシステムを歯科医療領域に応用する研究がすすめられ、スキャナーやCADソフトの開発が行われてきた。使用材料としても生体親和性が高いことが示されているものの従来の鋳造法では製作が煩雑、あるいは不可能なチタンやジルコニアが適用できるようになり、ますます歯科医療における貢献が評価されるようになってきた。特に近年、口腔内の修復物に多用されてきた金属に対して貴金属の高騰、歯質や歯肉の変色、歯根破折、天然歯色再現の困難さ、金属アレルギーなどが指摘され、メタルフリー修復への期待が高まっている。CAD/CAMシステムでは精製された素材の特性をそのまま活かすことができ、セラミックスやハイブリッド型コンポジットレジンの高品質高機能な特性を発揮することが可能である。

平成26年の医療保険改正に伴い「CAD/CAM冠」が導入されたことは保険診療としては画期的なことであり、将来の脱金属に対する助走であると考えられる。現在は小臼歯の全部被覆冠のみに適用されるが、支台歯形成や接着操作などの基本的術式を遵守し、大事に育てたいものである。また、セラミック系材料の開発も急速に進展し、長石系、リチウム2ケイ酸系、リューサイト系、ガラス含浸系などの従来のセラミックスが強化されたブロックやディスクの開発とともに、CAD/CAMシステムでしか取り扱えないジルコニアも高強度、高透光性の特性を有する素材が開発され、口腔内の環境に合わせて安定的に供給できる。このようにメタルフリー修復が多くの症例で適用されるようになり、国民に安全、安心、信頼できる歯科医療を提供できるようになってきた。

略 歴
1976年3月 大阪歯科大学卒業
1980年3月 大阪歯科大学大学院修了
1990年4月 大阪歯科大学 講師(歯科補綴学第2講座)
1997年4月 大阪歯科大学 客員教授
1997年4月 大阪歯科大学歯科技工士専門学校 校長
2006年4月 広島大学歯学部 非常勤講師
2008年4月 大阪歯科大学歯科衛生士専門学校 校長
(兼務 ~2014)
2014年1月 大阪歯科大学歯科審美学室 専任教授

学会
日本デジタル歯科学会 会長
日本医用歯科機器学会 会長
日本歯科審美学会 副会長
日本歯科技工学会 副会長
日本歯科医療哲理学会 常任理事
日本補綴歯科学会 医療問題検討委員会

特別講演

デジタルが拓く審美補綴治療
三浦 宏之
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
摂食機能保存学分野

講演者 三浦宏之先生 近年、患者さんの審美的な要求やアレルギー回避等の観点から、メタルフリー修復に高い関心が集まっており、様々な高強度セラミックスの開発や接着術式の発展と相まって、すでに多くの臨床に取り入れられるようになってきました。メタルフリー修復については、従来型のオールセラミッククラウンでは強度的に不安を抱いている臨床家も多く、つい最近まで審美補綴においてもメタルボンドクラウンが多くの症例で使用されていました。
しかしながら、歯冠修復材料の改良により、高強度のアルミナ系材料が開発され、さらにCAD/CAM技術の応用により、より高強度なジルコニア系材料が歯科においても使用可能となり、オールセラミック修復装置の強度に対する信頼性も大きく向上するとともに、貴金属合金価格の高騰と相まって、ジルコニアを応用したオールセラミック修復がメタルボンドクラウンに取って代わるようになってきました。
生体親和性が高く、より高強度なジルコニアは、クラウンブリッジはもとより、インプラントのフィクスチャー、カスタムアバットメントにまで広く用いられています。
最近では、歯科においてもCAD/CAM、光学印象などのデジタル技術が盛んに導入され、クラウン、ブリッジ等の補綴装置の製作法も大きく変わろうとしています。今日、歯科医療の中で、CAD/CAMシステムの発展は驚くほどの進歩を遂げています。加工精度の向上により、適合の良い補綴装置を容易に作製することができるようになりました。CAD/CAMシステムを応用したジルコニアによるオールセラミック修復が行われるようになり、ブリッジを含めたメタルフリー修復による審美修復の可能性も大いに広がってきました。以前は夢の世界であった、CAD/CAMによる補綴装置の製作が、高精度で実現できるようになり、クラウン、ブリッジ等の補綴装置の製作法は、今から約半世紀前にバンドクラウンから鋳造冠に代わった昭和30年代に次ぐ、一大変革期を迎えようとしています。鋳造冠は適合が良く、強度が強いことから長くクラウンブリッジの中核をなしてきました。しかしながら溶けた金属が固まる時の結晶の偏析や鋳造欠陥を避けることができず、もともと金属が持っている優れた性質を100%保った修復装置を製作することはできませんでした。一方、CAD/CAMは工業的に均一に作られたブロックを削り出して修復装置を作製するために、材料が持つ本来の優れた物性をそのまま引き継いだ補綴装置を作ることができるという大きな利点があります。
そこで、本講演ではCAD/CAM、ジルコニアを用いたメタルフリーブリッジの臨床経過を整理しをがら、臨床的な観点からCAD/CAMを応用したメタルフリー修復の現状と将来の展望についてお話をさせていただきたいと思います。

略 歴
1980年 東京医科歯科大学歯学部卒業
同歯科補綴学第2講座専攻生
1982年 東京医科歯科大学大学院博士課程入学
1986年 東京医科歯科大学大学院博士課程修了
同歯科補綴学第2講座医員
1987年 東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第2講座助手
1989年 フンボルト財団研究奨学生としてドイツ連邦共
和国チュービンゲン大学補綴科留学
1999年 東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第2講座教授
2000年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
摂食機能保存学分野教授
2001年 東北大学歯学部非常勤講師
2004年 徳島大学歯学部非常勤(~2007.3.)
2005年 米国ノースカDライナ大学客員教授(~2008),
東京医科歯科大学歯学部附属歯科技工士学校
長(~2011.3.),東京工業大学非常勤講師
2013年 九州大学非常勤講師

学会および社会における活動
日本デジタルデンテイストリー学会副会長
日本顎口腔機能学会常任理事
日本接着歯学会理事
口腔病学会理事
日本先進インプラント医療学会理事
日本補綴歯科学会,日本歯科審美学会評議員
日本補綴歯科学会専門医,日本接着歯学会認定医

展示ブース

      

企業による多数の展示ブースが設営され、最新の歯科医療器具や情報の展示がありました。

協賛団体・企業様

  • 相田化学工業株式会社
  • Ivoclar Vivadent株式会社
  • エンパワーヘルスケア株式会社
  • 株式会社 杏友会
  • 株式会社ジーシー
  • 株式会社松風
  • シロナデンタルシステムズ㈱
  • 株式会社スマートプラクティスジャパン
  • スリーエムヘルスケア㈱
  • Z-Systems AG (スイス Z- System 社)
  • 大信貿易株式会社
  • デンツプライ三金株式会社
  • 株式会社トクヤマデンタル
  • パナソニックデンタル株式会社
  • ペントロンジャパン株式会社
  • 株式会社 モリタ
  • 株式会社 ヨシダ
  • 和田精密歯研株式会社