2023年11月19日(日)主婦会館プラザエフ
主婦会館プラザエフにおいて、活況のうちに行われました。
大会長ご挨拶
第14回日本メタルフリー歯科学会学術大会大会長 小笠原健文
感染症の類型で5類になったとはいえ、未だに感染者が増加傾向にあるCOVID-19の終息が待ち望まれるところですが、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
この度2023年11月19日(日)第14回日本メタルフリー歯科学会総会・学術大会を開催のご拝命を受けました町田市民病院口腔外科部長 小笠原健文です。
会場はJR四ッ谷駅前にある『主婦会館プラザエフ』で、今回も対面での開催を中心にハイブリッドでも同時配信、そして約1か月間のオンデマンドにて参加可能となっています。
今回の学会は新たに服部正巳先生が理事長就任されて初めての学術大会です。本学会のさらなる飛躍を期待し、『RE-Start to Next Stage -メタルフリー歯科の現状と展望-』をテーマとしました。
現在の歯科において「メタルフリー」は歯科医療従事者や材料、研究の分野においても急激に浸透し、さらに歯科大学や一般臨床の先生方の啓発により十分に市民権を得ていると思われます。
これからさらにこの潮流は加速の一途たどることは間違いなく、また、保存、補綴の分野でもメタルフリー、金属アレルギーが討論されている昨今、この学会がその先鞭をとっていくことを期待するものであります。
第14回学術大会ではテーマに則り、昨年の総会で新理事長にご就任されました服部正巳先生に本学会の方向性についてご講演いただきます。
特別講演1としまして、国会でご活躍中の三原じゅん子参議院議員に「守ってあげたい。命を懸けて」と題しまして、主に女性の健康につきましてHPVウイルスワクチン、不妊治療など国の施策につきましてご講演いただきます。
更に歯科医療政策についてもお話ししていただきます。
特別講演2は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科齲蝕制御学分野 島田康史教授に「新しい齲蝕の診断とモニタリング技術の開発」と題しまして一般臨床医のための修復学についてご講演いただきます。
また、教育講演は2題、アレルギーの専門の先生方にご講演いただきます。稲田堤皮膚科クリニック 関東裕美先生には「生活習慣と金属アレルギー~臨床でのとらえ方~」を聖母病院皮膚科部長 小林里実先生には「掌蹠膿疱症および掌蹠膿疱症性骨関節炎のおける歯性病巣治療の重要性」と題しまして、まさにこの学会にふさわしいメタルフリーにつきましてご講演いただきます。そしてシンポジウムでは「メタルフリーの現状と展望」を総合テーマとしまして、日本歯科大学附属病院稔合診療科准教授 山瀬 勝先生にセラミックについて最新の情報を、一般臨床医を代表して、目白メディカルロード歯科院長 加藤 開先生に保険診療とアレルギー患者に対するCAD/CAM冠の有用性を、技工する立場から株式会社シケン東京技工所所長 藤本直也先生にCAD/CAMインレーの様々な臨床データを、そして株式会社歯愛メディカル営業部 柴田 力先生に「Ciが取扱うメタルフリー修復材料とデジタルデンテイストリーへの対応について」につきまして、それぞれの立場からご講演いただきます。
メタルフリー歯科学会の未来を見据え、それぞれのお立場で叡智を持ってコラボレーションし、発展していくために先生方と一緒にディスカッションできればと期待しています。
また、一般口演も予定しています。
ぜひ第14回日本メタルフリー歯科学会に一人でも多くの先生方にご参加、活発にディスカッションしていただき、日常の臨床に役立てていただけましたら幸いです。
最後に協賛いただきました株式会社歯愛メディカル様、株式会社シケン様、Z-System AG様、株式会社4DX様、株式会社トクヤマデンタル様、株式会社杏友会様、相田化学工業株式会社様、株式会社ジーシー様の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。
理事長ご挨拶
第13回 日本メタルフリー歯科学会学術大会に寄せて
一般社団法人日本メタルフリー歯科学会 理事長 服部 正巳
COVIT-19の感染症も5類に移行され日常を取り戻しつつありますが、未だ、感染が完全に治まったわけではなく、注意が必要ですが、種々の学会の学術大会が対面形式で開催されています。
今回、私どもの日本メタルフリー歯科学会の学術大会も対面をメインとし、オンデマンドでの参加も可能と したハイブリッドでの学術大会になり
RE-Start to Next Stage
-メタルフリー歯科の現状と展望-
というテーマを掲げて小笠原健文大会長のもと日本メタルフリー歯科学会第14回学術大会が開催されることは誠に喜ばしいかぎりです。
今年度より当学会の理事長を拝命し、身の引き締まる思いです。学会のために何ができるのか日々悩んでおりますが、精一杯頑張るしかないと思っています。
今回の学術大会のテーマを私なりに深読みしてみました。今までの学会活動を精査し、見直しをして、改革を行い、今後の学会の進むべき道を示す機会になる学術大会ではないかと思います。
第13回学術大会、第14回学術大会の両大会長は若く新進気鋭の有能は人物です。今後の学会の中心となって活躍されることを期待してやみません。
今回の学術大会は、関東裕美先生、小林里実先生の2名の著名な皮膚科医師による教育講演、島田康史先生、参議院議員の三原じゅん子先生による特別講演、山瀬勝先生、加藤開先生、柴田力先生、藤本直也先生によるシンポジウムなど、盛りだくさんの講演で、大会長である小笠原先生の人脈の凄さに驚かされております。それに加え一般講演もあり、会員の先生方の知的興味を満足させることは間違いありません。私も理事長として学会の未来展望を述べさせていただきます。メタルフリー歯科のすべてを、本学術大会から学んで頂きたいと思います。
理事長講演
メタルフリー歯科学会の現状と未来について
一般社団法人日本メタルフリー歯科学会理事長
愛知学院大学名誉教授 服部 正巳
当学会は前理事長の本間憲章先生を中心として、2009年11月29日に日本歯科大学生命歯学部富士見ホールにて、日本メタルフリー歯科臨床学会として設立総会が行われたのを始まりとして、途中、学会の名称が日本メタルフリー歯科学会と変更になりましたが、今回の第14回の学術大会へと繋がってきました。
例年、大学関係者が学術大会の大会長を務めてきましたが、昨年の第13回学術大会では初めて大学関係者以外の清水雄一郎先生が大会長を務め、成功裏に終了しました。大学の講座では医局員が多数在籍し役割分担も出来ますが、清水大会長は一人何役も掛け持ちして、頑張ったのではないかと推察しています。ご苦労様でした。
今回の第14回の学術大会も大学の講座ではなく、町田市民病院歯科口腔外科部長である小笠原健文先生のもと、人が限られるなか、お引き受けいただき感謝に堪えません。著名な多くの方々の講演を企画していただき改めて小笠原大会長の人脈のすばらしさに驚きを隠せません。学術大会参加者は講演内容を自分のものとし、今後の臨床に役立てられるのではないかと推察しています。
今回の学術大会での理事長講演では今までの学会活動を総括し、今後どのように学会を運営していくかを皆様よりご意見をいただき、私の考えを述べさせていただきます。学会は会員皆様のものであり、特定の人のものではありませんので、忌悼ないご意見をお寄せいただき、理事会の皆様と議論し学会をより良き方向へ導きたいと思います。ご協力をお願いいたします。
1977年 愛知学院大学歯学部助手
1979年 愛知学院大学歯学部講師
1984年 愛知学院大学在外研究員(カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校)
1994年 愛知学院大学歯学部助教授
2005年 愛知学院大学歯学部教授
2006年 モンゴル国立医療科学大学客員教授
2008年 藤田保健衛生大学医学部客員教授(2017年3月まで)
2015年 愛知学院大学歯学部附属病院第13代病院長(2018年3月まで)
2018年 名古屋ユマニテク歯科衛生士専門学校校長(現在にいたる)
2020年 愛知学院大学名誉教授
所属学会:
愛知学院大学歯学会
日本補綴歯科学会
日本老年歯科医学会
日本口腔ケア学会
日本メタルフリー歯科学会
教育講演 1
生活習慣と金属アレルギー ~臨床でのとらえ方~
稲田堤ひふ科クリニック 関東 裕美
生活を豊かにする貴金属製品以外にも、私達の日常生活に金属製品は欠かせない。
人体の器官や組織が欠損あるいは障害を生じた際に補充、修復目的で生体内埋人材料に医科歯科領域で金属が使われる。また生命維持に欠かせない元素として種々の金属を私達は食物から吸収し金属の生体内バランスを整えることで健康な生活が維持できる。
ピアスが金属アレルギー発症要因としてリスクが高いのは周知の事実であるが、日本ではニッケルの使用規制がないため金属アレルギーが増加しているとの疫学調査報告もある。人間の皮膚は金属に触れてもアレルギー反応を起こさないが、汗や唾液などで金属が溶けてできた‘‘金属イオン”が皮膚の蛋白質と結合すると、それを体が‘‘異物”とみなし、拒絶反応を起こし感作が成立してしまうことがある。
過剰に擦ったり掻いたりして皮膚のバリアが壊れると異物は皮膚に吸収されやすくなるし、汗をかきやすい夏には皮膚表面で金属がイオン化しやすく、経皮的に金属アレルギーを発症する人が多い。
このように金属アレルギーには汗で製品から金属が溶け出て皮膚表面からの吸収により経皮感作が成立して起こる接触皮膚炎(かぶれ)と歯科金属や食事の影響で生体内の金属イオンのバランスがくずれ、経口感作が成立して発汗中により多くの溶けでた金属イオンによって腋窩や乳房下、股部などの間擦部から全身に広がってくる全身型金属アレルギーがある。金属製品の接触はないのに汗貯留部に皮膚炎が起こり自分の汗でかぶれたように思える皮膚症状が起こるので、全身型金属アレルギーは内因性アトピー性皮膚炎としても理解されるようになってきている。
1980年 東邦大学医学部医学科卒業
1981年 東邦大学医学部皮膚科入局
1983年 東邦大学医学部皮膚科学教室助手
1985年 日本皮膚科学会専門医
1986年 国家公務員共済組合連合会東京共済病院医長
1988年 東邦大学医学部助手(皮膚科学教室)復職
1990年~1997年 日産厚生会玉川病院医長・部長
1999年 博士(医学)取得.認定産業医
2000年~2002年 米国Cincinnati大学皮膚科学教室留学
2005年 東邦大学医学部皮膚科学講座講師
2007年 同准教授
2012年 東邦大学医療センタースキンヘルスセンター長・臨床教授
2020年 東邦大学皮膚科客員教授
2022年 退官後,稲田堤ひふ科クリニックで診療
所属学会:
日本エステティック研究財団理事長
日本毛髪科学協会副理事長
厚生労働省薬事・食品衛生審議会臨時委員
文部科学省大学設置・学校法人審議会専門委員
大学設置分科会委員
消費者庁消費者安全調査委員会委員
国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員
教育講演 2
掌臆膿病症および掌糖膿病症性骨関節炎における歯性病巣治療の重要性
聖母病院皮膚科 部長 小林 里実
掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:PPP)は手掌と足底に無菌性膿痛が多発する疾患で、日本人に多く、その10~30%で掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis:PAO)を併発する。
膿痛が手足に慢性的に多発するPPPは、洗顔や洗髪、歩行などを困難とするほか、人前で手を出せない、家族に疎まれるなど精神的QoL障害をきたす。
胸鎖関節炎、脊椎炎などPAOの多彩な骨炎は、無菌性骨髄炎の痛みから呼吸や寝返り、着替えなど基本的生活を障害し、進行すると椎骨に強直や骨折をきたす。
PPP、PAOともに、喫煙に加え、多くの患者で病巣感染が発症契機となっており、病巣の除去により進行が止まり、症状が改善する。
感染病巣として重要なのが無症状の歯性病巣、扁桃炎、慢性副鼻腔炎で、歯性病巣治療や扁桃摘出の有効率は60~80%に及ぶ。
2022年に上梓されたPPP、PAOの両診療の手引きにも、生物学的製剤を含む薬物療法は全て対症療法に過ぎず、禁煙と病巣治療が治療の主軸であることが明記された。
金属アレルギーの関与はPPPの5%程度、PAOでは全く関与しない。そこで、治療の担い手となる歯科の先生方と正しい情報を共有し、通常は治療対象にならない無症状の歯性病巣の治療を必要な患者に実施するための医科歯科連携を切にお願いする次第である。
1989年 東京女子医科大学医学部卒業
1991年 東京女子医科大学皮膚科学教室助手
1998年 米国 School of Medicine,Case Western Reserve University ポストドクトラルフェロー(Prof Kevin D Cooperに師事)
2001年 東京女子医科大学皮膚科学教室助手
2006年 東京女子医科大学皮膚科学教室講師
2008年 社会福祉法人聖母会 聖母病院皮膚科医長
東京女子医科大学皮膚科学教室非常勤講師
2016年 社会福祉法人聖母会 聖母病院皮膚科部長
現在に至る
所属学会:
日本皮膚科学会代議員
日本皮膚免疫アレルギー学会代議員
日本小児皮膚科学会運営委員
日本乾癖学会,日本リウマチ学会,
日本脊椎関節炎学会,日本研究皮膚科学会
American Academy of Dermatology,European Academy of Dermatology and Venereology 他
患者会活動:
東京乾癖友の会P-PAT相談医,ウイメンズ 顧問医
掌臆膿病症患者会 PPPコミュニティ 顧問医
特別講演 1
新しい繭蝕の診断とモニタリング技術の開発
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野教授
島田 康史
接着を用いた齲蝕治療は歯質切削量を抑制し侵襲が少ないことから、齲蝕治療のスタンダードとして世界的に認知されつつある。
齲蝕の接着修復を長期的な成功へと導くためには、修復材料の特性を理解して症例に適した材料を選択し、的確な手技を行う必要があり、したがって、症例の正確な診断が必須となる。
光干渉断層計(OCT)は放射線を用いずに歯の精密な断層画像が得られ、精度の高い齲蝕の診断法として注目されている。
断層画像を用いた歯の内部の情報から、視診やⅩ写真では検出が困難な初期齲蝕やhidden cariesの診断も行うことができる。
またコンポジットレジン修復など光を透過する修復材斜に対しては、口腔内の適合状態や二次齲蝕の有無を診断し、モニタリングすることができる。
齲蝕に対する優れた診断精度から、2020年5月に歯科用の医療機器として承認が得られている。
OCTは歯の摩耗や亀裂など、従来の画像診断方法では診断が難しい疾患に対しても、その進行状態を画像表示し、治療介入の判断に必要な情報を提供することができる。
本講演ではOCTを用いた齲蝕の診断とコンポジットレジン修復のモニタリングについて解説する。
1987年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
1995年 同大学歯学部歯科保存学第一講座助手
2017年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科保存修復学分野准教授
2021年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野教授
学会活動等
日本歯科保存学会(専門医・指導医)
日本接着歯学会(専門医・指導医)
岡山大学非常勤講師
東北大学非常勤講師
特別講演 2
守ってあげたい。いのちを懸けて
参議院議員 三原じゅん子
本講演では「女性の健康」について取り上げたい。
若年層にも増加し、マザーキラーと呼ばれる子宮頸がんをワクチンによって予防できる現状を、広く周知徹底を図るべき。
国の使命を果たせていない今、医療界全体の課題として取り組んでいただきたい。
HPVウイルスを封じ込め子宮頸がん・中咽頭がんを撲滅させる長期的プロジェクトを進めるための議論を行うべきである。
不妊治療を含め、働く女性が抱える出産の高齢化に伴う生殖医療についての社会の認識を改め、卵子凍結等の助成、働き方改革等々今後の我が国が抱える少子化問題について、日本メタルフリー歯科学会の皆様と共に考えてまいりたい。
また、本講演では、歯科医療政策の現状についても言及したい。
健康で質の高い生活を営む上で、口腔の健康の保持・増進が重要な役割を果たしていることから、定期的な歯科診療の受診を通じて、生涯を通じた歯・口腔の健康を実現していくことが必要である。
昨年の経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)に、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」との文言が記載され、本年は、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民骨歯科健診)に向けた取組の推進」と、さらに前向きな表現となった。
8月末に閣議決定した概算要求では、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民骨歯科健診)推進事業」について、昨年より約2400万円増額した5億6739万円を計上し、歯科健診の充実・歯科口腔保健の向上を目指したものとなっている。
現在、年末の診療報酬改定に向けた検討が行われている。かかりつけ歯科医の機能・役割、歯科医療機関の役割分担・機能分化、医科歯科連携推進、地域包括ケアシステムにおける連携、歯科疾患の重症化予防、ライフステージに応じた口腔機能管理、訪問歯科診療の推進等の論点についての議論が行われている。
診療報酬と併せ、年度末の予算編成、税制改正に向けて、皆様のご期待にお応えできるよう、しっかり取り組んでまいりたい。
自由民主党神奈川県参議院選挙区第四支部長
当選回数:3回
平成22年7月 第22回参議院議員通常選挙・全国比例区にて初当選
平成28年7月 第24回参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて2期日の当選
令和 4年7月 第26回参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて3期日の当選
党役職:
自由民主党二輪車問題に関する対策PT 座長
自由民主党情報通信戦略調査会 幹事長代理
これまでの役職:
厚生労働副大臣
内閣府大臣補佐官
自由民主党女性局長(4期)
自由民主党神奈川県連女性局長
参議院厚生労働委員会 委員長
参議院消費者間題に関する特別委員会 委員長
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 委員長
自由民主党インターネット上の誹誘中傷・人権侵害等の対策PT 座長
自由民主党クールジャパン戦略推進特命委員
シンポジウム
セラミックス再考
~何を選択し、どのように使うのか~
日本歯科大学附属病院総合診療科・准教授 山瀬 勝
患者の審美的要求ヤアレルギ一に対する関心の高まりから、メタルフリー修復を選択する機会が増加している。
CAD/CAM冠やファイバーポスト、高強度硬質レジンブリッジが相次いで保険収載され、メタルフリー修復への流れは今後も加速していくものと思われる。
レジンと並びセラミックスは審美性と生体親和性を兼ね備えた代表的なメタルフリー修復材科であり、さまざまなセラミックスを用いることで、これまでメタルクラウンやメタルブリッジ、メタルセラミックスが担っていた修復治療を金属を使用せずに行うオールセラミック修復が可能となった。
現在多くのセラミック材料が存在し臨床で使用されているが、それぞれの材料に特徴があり、それらを十分に理解した上で使いこなす必要がある。
例えばジルコニアはその高い強度から応用範囲が広く、新世代の材料として大きく取り上げられてきたが、臨床応用が進むにつれて、いくつかの問題点も明らかとなっている。
審美性改善の観点から高透光性ジルコニアが開発され、モノリシック修復に応用されているが、透光性を高めるためにジルコニアの大きな特徴であった強度は低下することになった。
ジルコニアと一言で言っても多くの種類が存在し、これも我々を迷わせる原因となっている。このように多くの種類が存在するセラミックスを適切に使用するためには各種材料の物性を把握し、さらに臨床研究の結果と合わせて材料を選択することが重要で
ある。
本講演では、どのような症例に対してどのセラミックスを選択するのか、そして選択したセラミック修復を口腔内で長期的に維持するためにどのように使用すればよいのかを理解するために、各種セラミック材料の基本的性質について解説し、その特徴と問題点、そして臨床において失敗しないためのポイントについて言及する。
略 歴
1992年 日本歯科大学歯学部卒業
1996年 日本歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了〈博士(歯学)〉
2004年 ニューヨーク大学歯学部稔合歯科学講座客員研究員(2005年まで)
2012年 日本歯科大学附属病院総合診療科准教授
社会活動:
日本接着歯学会 〈指導医・接着歯科治療専門医〉
日本歯科理工学会 〈Dental Materials Advisor, Dental Materials Senior Advisor〉
日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
International College of Prosthodontists
など
歯科保険診療におけるメタルフリーについて、
歯科用金属アレルギー患者の長期症例からみたCAD/CAM冠の有用性
目白メディカルロード歯科 院長 加藤 開
現在、自由診療では歯科加圧成形用セラミックスやジルコニア、ハイブリッド硬質レジン、CAD/CAM等様々なメタルフリー材料がある中で、歯科保険診療のメタルフリーにおける歯冠修復物・歯冠補綴物に関して近年メタルフリーの診療が拡大されている。
歯科保険診療のメタルフリーに関して今までの経緯と今後について考えてみたい。
2014年歯科診療報酬改定から12%金銀パラジウム合金以外として先進医療からCAD/CAM冠が小臼歯のみに保険収載され、2016年度歯科診療報酬改定においては歯科用金属アレルギー患者において、医科での歯科用金属アレルギーの診断があれば大臼歯部までCAD/CAM冠が適応拡大されるなど、金属アレルギー患者にとっては保険診療でも安心して補綴治療を行えるようになった。
2019年12月から区分C2である新機能・留意事項変更として下顎第一大臼歯も条件付きで保険収載された。2022年度歯科診療報酬改定では条件付きではあるが小臼歯及び第一大臼歯においてCAD/CAMインレーも保険診療に導入された。
大臼歯においては依然と左右上下顎の第二大臼歯があり咬合支持があることが条件となっている。
12%金銀パラジウム合金の市場価格の高騰と補綴学会等からCAD/CAM冠等の新規技術提案書が出されたことによりメタルフリーにシフトしてきている。
保険収載されるには、各関連学会から出されている新規技術提案書でエビデンスを踏まえて中医協で議論されなければならない。
CAD/CAMについてはまだ課題が残されている中で、従来の歯冠修復物及び歯冠補綴物での金属の使用からメタルフリーの歯冠修復物・歯冠補綴物へと移行してきている現在において、歯科用金属アレルギー患者での長期症例をもとに保険収載されているメタルフリー症例でのCAD/CAMの有用性について考察する。
略 歴
1997年 明海大学歯学部卒
1998年 明海大学歯周病学講座在籍、医療法人社団ペリオ会理事長就任 宮田歯科医院長
2010年 目白メディカルロード歯科 院長
現在に至る
2007年~ 日本歯周病学会会員 歯周病専門医
エルビウムヤグレーザ一研究会 会員
日本有病者歯科医療学会 会員
東京歯科保険医協会
2007年8月 理事
2013年6月 社保・学術部部長
2017年6月 社保・学術部副会長
現在に至る
Ciが取扱うメタルフリー修復材料とデジタルデンテイストリーヘの対応について
株式会社歯愛メディカル 営業部営業企画課 柴田 力
金属はその加工性や耐久性など歯科修復物として様々な利点があり、古くから多種多様な合金が歯科用途に用いられて参りましたが、近年はアレルギーの問題や患者様からの歯科修復への審美的要求の高度化、それに特に貴金属は価格高騰などの要因が重なり、脱金属への流れが激しくなっております。
弊社も当初より健保用のCAD/CAM冠用ブロック材料を国内外から各種取り揃えておりますが、デジタルデンテイストリーへの対応に注力しており、自由診療用の各種セラミックス材料におきましても幅広く取り揃えて歯科医院・技工所様からのニーズにお応えできるよう努めており、材料はもとより材料加工用の各種加工機、設計用ソフトウェア、印象採得用口腔内スキャナーなどハードウェアも取り揃えております。
2023年からはAIテクノロジーの先進企業と提携し、修復用歯冠形状の自動設計サービスも開始し大きな反響を頂いております。
本日はその中から特にセラミックス材料を中心に2ケイ酸リチウム系ガラスセラミックスと部分安定化ジルコニア製品の中から最新の材料にフォーカスしてその特性とラインナップをご紹介すると共に、実際の診療にご活用頂くための流れも解説できたらと考えております。
皆様の製品選択の一助となれば幸いです。
略 歴
東京医科歯科大学歯学部附属歯科技工士学校実習科卒業
株式会社ジーシー 研究所並びにマーケテイング部所属
株式会社モリタ 商品企画戦略室次長
ストローマンジャパン株式会社 シニアプロダクトマネージャー
株式会社ニッシン 開発本部副本部長
株式会社インプラテックス 学術営業本部副本部長
ガイストリッヒファーマジャパン株式会社 ナショナルセールスマネージャー
株式会社歯愛メディカル 営業部営業企画課
CAD/CAMインレー修復物における臨床データ、実績値から推察されたトラブル比率について
株式会社シケン 藤本 直也
【目 的】
緒言:平成26年4月より小白歯単冠に限定されたCAD/CAMシステムを応用したCAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックが保険収載されて以降、大臼歯、前歯と適応範囲が拡大され、令和4年4月の診療報酬改定においてCAD/CAMインレーが新しく保険適応となった。パラジウム価格高騰の影響から、代替材料としてCAD/CAM用材科の注目度が高まっているが、一方で特にCAD/CAMインレ一に関してはメタルインレーとは異なる特有の留意点があり、収載当初では不適切な裔洞形成や装着工程の末、破折・脱離などのトラブルに起因することが予見されていた。
今回、弊社がCAD/CAMインレーを対象に実際臨床で使用している各メーカーのブロックを主にトラブル要因、再製率の調査を行い、いくつかの知見を得たので今回報告する。
【対象と方法】
調査対象:CAD/CAMインレーのトラブル要因、再製率の調査は令和4年4月より令和5年2月までの11カ月問のデータをもとに月別製作本数および月別再製理由と再製率、加えて各メーカーのブロック割合、製作部位、男女比率等を数値化した。
また製作過程において各販売メーカーの公示を参照にCAD/CAMインレー用のパラメーター、加工プログラムを適正化した。
【結果および考察】
11カ月の製作期間を経ての統計として総製作数11、754本に対し再製数130本、再製率で表すと1。11%という結果となった。調査期間は一年足らずと検討の余地はあるが、当初の懸念を払拭し比較的良好な数値と許する。対象としたメーカー、製作部位、男女比率等について気にかかる特異点は示さなかったが再製となるトラブル要因に関しては有意差がみられた。
【ま と め】
今回調査したCAD/CAMインレー、臨床成功には我々歯科技工士サイドの製作過程における精度および歯科医師サイドの適正な印象、裔洞形成、接着手順のご協力が必要不可欠である。メタル関連の修復物とは異なる特性を理解することで、よりスムーズでエラーの少ない補綴治療に繋げられると推察する。
参考資料
1)株式会社ジーシー セラスマートシリーズパンフレットより引用
2)YAMAKIN株式会社 歯科用デジタルハンドブック別冊より引用
略 歴
平成13年3月 大阪歯科学院専門学校卒
平成13年4月 株式会社シケン入社高松技工所配属
平成25年5月 日本歯科審美学会会員
平成29年4月 株式会社シケン高松技工所副参事
令和 3年2月 日本歯科技工士会会員
令和元年9月 株式会社シケン東京技工所所長 管理者
メタルフリー治療の1症例
庄内歯科医院
○庄内 晃二、庄内 聡子
A case ofmetal-freetreatment
Shonai Dental Clinic
SHONAI Koji、SHONAI Satoko
【目 的】
歯科用金属アレルギーの患者に対して、保険診療でのメタルフリー治療をおこなうことにした。またCAD/CAM冠はメタルクラウンに比し歯冠の切削量が多く、歯冠長の短い歯には維持力が得られにくい。
また装着後の将来は脱落する可能性も高い。それに代わり埋伏智歯を移植歯とする優位性があるため移植した。
その結果メタルフリー治療が行えた症例を報告する。
【対象と方法】
患者37歳女性は、2023年3月31日メタルフリー治療を希望し来院した。患者はピアスなどで皮膚炎が起こりやすいこと、また口腔内の金属も原因の一つではないかと気になっていた。
皮膚科を受診したところ、Pd、Ni、Irに陽性で金属アレルギーと診断を受けた。
また保険診療でCAD/CAM冠、CAD/CAMインレーの導入がなされ、審美的治療も可能になった事を伝えたところ、当該患者からも了承を得た。
治療に当たってCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの歯質切削量はメタル修復に比し多く、治療装着時にも破折などのトラブルが起こりやすい。
当該患者も11歯のメタルインレー・2歯のメタルクラウンが装着されているが、メタル除去後さらに拡大形成が必要である。
しかし歯質切削量を少なくするため、小さい窩洞はコンポジットレジン充填にした。だが大きな歯質欠損部はCAD/CAMインレーとし、17番のメタルクラウンはCAD/CAM冠とした。しかし37番のメタルクラウンは歯冠長が短く、CAD/CAM冠形成では維持力が得られず、将来脱落する可能性もあり、6月28日37番を抜歯、埋伏歯の38番をその抜歯窩に移植した。
【結 果】
口腔内からは、金属はすべてなくなり、審美的にも満足のできる状態になった。また歯科用メタルアレルギーの発症も抑えることができた。
移植歯も経過良く咬合に関与している。
【考察および結論】
CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーは、審美的には優れているが、歯質の切削量が多い。
メタルに比し耐久性も疑われる課題がある。
近年、歯科用金属アレルギーの報告も多く、積極的なメタルフリー治療を勧めるべきと思われた。
また当該患者にはドナー歯が在ったためメタルフリー治療に有効利用できた。
掌蹠膿疱症患者に対し、口腔内金属除去療法を実施した症例東京医科
歯科大学大学院医歯学総合研究科校合機能健康科学分野1)
東京医科歯科大学病院義歯科(専)歯科アレルギー外来2)
○松村葉由子1・2)、松村 光明2)、北崎 祐之2)、馬場 史郎2)、笛木 賢治1)
A case report of Pustulosis Palmaris et Plantaris improved by elimination of intraoral metal
Masticatory Function and Health Science Graduate School of Medical and Dental Sciencel)
Department of Dental Allergy2)Tokyo Medical and Dental University MATSUMURA Mayukol)、MATSUMURA Mitsuaki2)、KITAZAKI Hiroyuki2)BABA Shiro2)、FUEKI Kenji3)
【緒 言】
アレルギー疾患対策基本指針の改正やCAD/CAM冠・インレーの保険適応範囲拡大など、歯科医師は今まで以上にアレルギー疾患とメタルフリー治療に対する理解が必要となった。
そこで今回は、金属アレルギーが原因の一つとして挙げられる掌蹠膿疱症(PPP)患者への検査法及び治療方針を示す症例を報告する。
【症例・臨床診断】
患者は34歳女性。PPPによる手足の疼痛症状を主訴に受診。手掌部に小水泡・小膿疱、左側足跡に膿疱・鱗屑が出現し、皮膚科にて掌蹠膿疱症と診断を受けた。
既往歴として金属に対する接触性皮膚炎の傾向があり、口腔内に多数の金属歯冠修復物が認められたことから、口腔内金属アレルギーによるPPPの疑いと診断し、パッチテスト(PT)にてアレルゲンを精査し、歯科治療的アプローチ検討することとした。
【処置・結果】
PTは21種類の金属元素を対象にICDRG基準を用い7日目までの判定を継続、最終判定はニッケル(Ni)・金(Au)に対し陽性反応が認められた。口腔内に装着されている歯冠修復物はAu含有の可能性が高く、複数回に分けて口腔内金属を除去した。光硬化型GICで
仮封後、約2ケ月間の経過観察でPPPの改善を確認し、ジルコニアを用いて再修復・補綴治療を実施した。
【経過・考察】
歯科治療終了後から5年以上経過しているが、PPPの悪化、修復・補綴装置の脱離や破折はない。
本症例からアレルギー疾患に対する歯科的アプローチの可能性が提示された。
(発表に際し、患者の同意を得た。)
口腔の金属修復物を除去し皮膚炎の改善を認めた一症例
川村歯科医院1)、日本歯科大学附属病院総合診療科2)、日本歯科大学生命歯学部歯周病学教室3)○川村 浩樹1・2・3)
A Case of Dermatitis that Improved With Treatment of Oral Metal Prothesis Removing
Kawamura DentalOffice 1)、Division of General Dentistry、The Nippon Dental University Hospital 2)
Department of Periodontology、School of Life Dentistry、The Nippon Dental University 3)KAWAMURA Hirokil・2、3)
【緒 看】
金属アレルギーとしてよく知られている病態として金属と皮膚の接触によるアレルギー性接触皮膚炎などが挙げられるが、それ以外にも全身型金属アレルギーとして掌蹠膿疱症、亜急性痒疹、異汗性湿疹、多型慢性痒疹、扁平苔癬、紅皮症、貨幣状湿疹、仮性アトピー性皮膚炎などが知られている1)。
今回演者は、口腔内の金属修復物に起因する皮膚炎と思われる一例を経験したので報告する。
【症 例】
37歳、女性
初診:2017年8月
主訴:皮膚科より口腔内金属修復物の除去依頼
現病歴及び現症:2年ほど前より顔面の湿疹、頭皮の円形脱毛を発症、福島県立医科大学皮膚科を受診した。
患者は化粧品会社の販売員であり、自社の化粧品による顔面の接触皮膚炎の疑いのもと、鳥居スタンダード、金属パッチテストパネル、持参化粧品により、同院でパッチテストを施行したとの事である。
その結果、化粧品に関しては陰性、ニッケル、コバルト、金、白金、パラジウム陽性であった。その後、福島労災病院皮膚科に紹介転院、治療継続中である。
現在の処方は外用でロコイドクリーム、アンテベートクリームとの事である。同科より、日本歯科大学附属病院口腔アレルギー外来宛に歯科金属の除去依頼により紹介来院した。
口腔内の現症としては歯科金属修復が多く装着されていた。口腔の粘膜には異常は認められなかった。
処置及び経過:適法通り、生活習慣や食生活などに関しての問診を行い、細かい症状を知るため口腔アレルギー外来独自の質問票、1週間食事の記録の記入を行い、現在の状況を確認した。
その後、患者と相談の上、出来る限りの歯科金属修復の除去を試みることとした。
まず初期治療として口腔内の清掃状況の改善を行い、保存不可能歯の抜歯を行った。その後、順次歯科金属修復物の除去を行い、除去した部位は即時重合レジンにて暫間被覆冠とした。除去は歯根破折の危険を伴う一部のメタルコアを除き行った。これには数ヶ月を要した。その後、一部の歯の根管治療を行った。この中途の段階で、処置を担当していた演者が大学病院を退職することとなり、患者に担当医引継ぎの打診を行ったところ、演者による継続的な加療を希望したため、演者の勤務先に転院となった。
根管治療終了後、ジルコニアフレームオールセラミックス及びエンプレスe-maxによる歯冠修復を行い、現在、経過観察中である。
皮膚症状は、本人によると顔面の湿疹、円形脱毛症も著しく改善し、生活のQOLが上がったとの報告を得ている。
【結 論】
今回演者は、口腔の金属修復物を除去し皮膚炎の改善を認めた一症例を経験したので報告した。
【参考文献】
1)関東裕美:金属アレルギーの臨床型と診断、歯科ア レルギーNOW疾患の基礎と臨床のエッセンシャル、14-17、デンタルダイアモンド社、東京、2016。
難治性口蓋粘膜炎の1例
医療法人社団智正会/白川デンタルクリニック1)、西デンタルクリニック2)
○鵜山 美紀1)、西野 有紀2)、木村 明菜1)、百瀬 恵美1)戸城奈津季1)、谷川 由佳1)、副11正順1)
A case of refractory palatal mucositis
Medical Corporation Tesshokai/Shirakawa Dental Clinic 1)、Nishi Dental Clinic 2)
UYAMA Maki 1)、NISHINO Yuki 2)、KIMURA Akina 1)、MOMOSE Emi 1)TOSHIRO Natzuki 1)、TANIKAWA Yuka 1)、SHIRAKAWA Masayori 1)
【目 的】
緒言:近年、金属アレルギー患者が増加している。金属アレルギーの病態は装飾品などの金属が皮膚と接触して発症する接触性皮膚炎が知られているが、歯科領域についても歯科用金属を原因として口腔粘膜や歯肉の一部に症状を発症する症例の報告が散見されるようになった。
今回、演者らは難治性口蓋粘膜炎の原因として、歯科用金属を疑い、メタルフリー治療を試みたところ、症状が改善し得た1例を経験したので、若干の考察を加え報告する。
【対象と方法】
症例 86歳 女性
初診 2021年 5月
主訴:口蓋粘膜の疹痛ならびに灼熱感
現病歴ならびに現症:初診の約2か月前より、口蓋粘膜に出血と疹痛、灼熱感を自覚していた。自然治癒すると考えたが、改善せず灼熱感が増強したため来院した。
口腔所見:右口蓋粘膜を中心に左口蓋に及ぶ、発赤を伴う粘膜斑を認めた。オルソパントモならびにCT所見では口蓋骨には異常を認めなかった。
処置および経過:合歓剤とステロイド含有軟膏、炭酸ガスレーザーの照射を繰り返し施行した。その経過は、数週間で灼熱感の緩和は得られたが、粘膜班は依然、改善しなかった。そのため、生検を行ったところ、慢性炎症性病変という病理組織学的診断を得た。
初診から5カ月経過したが、症状は改善傾向を認めなかったため、金属アレルギーの可能性についても考慮して近皮膚科と連携しパッチテストを行った。その結果、ニッケル、パラジウムに陽性反応を示した。口腔内には#16、#36、37、38、#46に金属冠が装着されていた。原因が金属アレルギーの可能性について患者にICした所、メタルフリーを望んだため、これらの金属冠をCAD/CAM冠に置き換えた。
置換修復から約8カ月後、口蓋の粘膜症状は消失し、健康粘膜に改善した。
現在、2年6カ月を経過したが、再発は認められない。
【考察および結論】
考察:金属アレルギーは金属が何らかの免疫学的機序に働いて、生体に影響を与える結果、惹起される病態である。
歯科用金属を原因とする発疹例は1929年にFleischmannl)の報告に始まり、本邦では1960年に仲井2)がクロムとニッケルによる歯肉炎について報告し、その後、中山3)により、歯科用金属アレルギーによる口腔扁平苔癖ならびに掌蹠膿疱症について症例報告がなされた。
最近では、歯科用金属アレルギーの報告例が多数みられるようになり4)、その臨床症状は多彩になっている。自験例では初診時、口蓋粘膜の痺痛を伴う発赤に加えて灼熱感など、その臨床症状は天痘瘡などの難治性口腔粘膜炎が疑われ、ステロイド含有軟膏、合歓剤、あるいは炭酸ガスレーザーの照射など疾病に対する対症療法などを施行した。しかし、症状は軽減しては増悪を繰り返すという、一進一退の状態で治療に苦慮したが、口腔内に歯科金属による歯冠修復物の存在を認めたため、パッチテストを施行した。その結果、パラジウム、ニッケルに陽性反応を示したため、歯科用金属を除去して、早期にCAD/CAMによる置換修復を行ったところ、徐々に改善傾向を認めた。完治まで約1年以上を要したが、患者ならびに施術者の最良のコミュニケーションにより、治癒を促した。難治性の口腔粘膜病変の場合、症状が遷延化するため、患者ならびに施術者相互の信頼関係が失われ、治療が中座することは稀ではない。自験例では相互のより良い信頼関係が得られた結果と思われた。2年6カ月経過した現在、症状は消失し、再発を見ていない。
以上、自験例を通して考察すると口蓋などに多い天疱瘡に類似した難治性口蓋粘膜斑などに遭遇した場合、歯科金属によるアレルギー性の粘膜斑等を疑ってみることも一考と思われた。
結論:演者らは難治性の口蓋粘膜斑に遭遇し、歯科金属をCAD/CAMに置換修復して完治した症例を経験したので若干の考察を加え報告した。
【参考文献】
1)Fleischmann. P.:ZurFrageder Gefahrlichkeitkleunster Quecksilbermengen. Dt.Med. Wschr.,54:304,1928.
2)仲井 厚、皮膚アレルギーと口腔粘膜アレルギー:デンタルダイアモンド者. 東京. 1993.
3)中山秀夫、大城晶子、佐藤重臣、他:歯科金属アレルギーによる扁平苔癬の2例について、耳鼻咽喉科、44:239-247, 1972.
4)白川正順、石垣佳希、今井 裕、他:金属アレルギー患者における診断・治療法に関する研究. 日歯病学会誌 34:37-41, 2015.
歯科用金属除去により改善を認めた両側頬粘膜口腔届平苔癬の1例
町田市民病院歯科・歯科口腔外科
○鈴村 一慶,前田 洋貴,小林 成行,望月 航,田中 桜丸
中村 陽介,水永 丈嗣,小笠原 健文
A case of orall ichen planus on both sides of the buccal mucosa that improved after dental metal removal
Machida municipal hospital Dental and oral surgery
SUZUMURA Kazuyoshi,MAEDA Hiroki,KOBAYASHI Shigeyuki, MOCHIZUKI Wataru,TANAKA Sakuramaru,NAKAMURA Yousuke, MIZUNAGA Takeshi,OGASAWARA Takehumi
【緒 言】
口腔扁平苔癬とは、口腔粘膜に生じる慢性の角化異常を伴う痛変であり、その病態は様々である。原因は現在不明といわれているが、要因の1つとして歯科用金属アレルギーが挙げられる。
今回我々は歯科用金属除去により改善がみられた両側頬粘膜扁平苔癬の1例を経験したため若干の考察を加え報告する。
【症 例】
53歳女性。当科受診の1年ほど前から主に両側頬粘膜に繰り返すびらんを自覚。近耳鼻科にて経過観察を続けていたが改善せず当院内科および皮膚科を受診。
膠原病やウイルス性疾患は血液検査・臨床所見で否定され、皮膚科パッチテストの結果、塩化金酸、塩化パラジウム陽性。当科兼診依頼あり受診となった。
初診時、両側頬粘膜には接触痛を伴う広範なレース様白色変化を認め一部びらんも認めた。両側臼歯部にはう蝕治療・欠損補綴に伴う金属性補綴物を多数認めた。
【臨床診断】
内科および皮膚科にて膠原病・ウイルス性疾患否定されていたが鑑別診断のため頬粘膜を一部切除し組織診を施行。両側頬粘膜口腔扁平苔癬の診断。
【処置及び結果】
インレーは除去しCR修復、ブリッジや前装冠等は除去し、メタルコアやスクリューピンをすべてファイバーコアに置換し現在はテンポラリークラウン・ブリッジにて経過観察中であり、今後セラミッククラウン・ブリッジにて最終補綴予定である。金属補綴物を全て除去したおよそ3か月の間に徐々に頬粘膜の接触痛は消退し、すべて暫問補綴物に置換した時点でレース様の白斑はほぼ消過していた。
【結 語】
口腔扁平苔癬の病態や原因は不明であるが、明らかな機械的刺激やその他要因認めず皮膚科に依頼しパッチテストで歯科用金属のアレルギーが陽性となる症例は稀ではない。
歯科用金属除去により症状改善が認められたが、当科受診までの約1年間、患者のQOLが著しく低下していたことは想像に難しくない。金属アレルギーは機序的にも遅発性に症状が出現する場合が多いことを踏まえ、長期的予後・QOLを考慮した最終補綴のためにはメタルフリーでの補綴が有用であると考える。
口腔届平苔癬様病変を生じている歯科用金属アレルギー患者に金属除去を行い、軽快した1例
町田市民病院歯科・歯科口腔外科
○田中 桜丸 中村 陽介、前田 洋貴、小林 成行、鈴村 一慶
望月 航、水永 丈嗣、小笠原健文
A case of relief after metal removal for the patient with dental metalal allergies who have oral lichen planus-like lesions
Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Machida Municipal Hospital
TANAKA Sakuramaru, NAKAMURA Yosuke, MAEDAHiroki, KOBAYASHI Shigeyuki, SUZUMURA Kazuyoshi, MOCHIZUKI Wataru, MIZUNAGA Takeshi, OGASAWARA Takefumi
【緒 言】
口腔扁平苔癬は、口腔粘膜に網状、レース状の白色病変を形成し、軽度の角化異常を伴い慢性に経過する炎症性病変で、歯科用金属アレルギーやHCVとの関連も示唆されている。
今回我々は、口腔扁平苔癬様病変を生じている歯科用金属アレルギー患者に金属除去を行い、軽快した1例を経験したので、若干の考察を加え報告する。
【症 例】
患者:71歳、女性。主訴:両側頬粘膜の疹痛。既往歴:喘息。現病歴:頬粘膜の疹痛を自覚、かかりつけ歯科を受診し、精査目的に当科紹介となった。全身所見:特記事項なし。口腔内所見:両側下顎白歯部歯肉から頬粘膜にかけてレース場の白斑を伴う発赤を認めた。
臨床検査所見:WBC7600/μI. CRPO.05mg/dL.
【臨床診断】
口腔扁平苔癬。
【処置及び経過】
初診時に細胞診を施行しClassⅡの判定、アズレン系合歓剤及びステロイド口腔用軟膏を処方したが著変なく、局所麻酔下に生検を施行し、Ulcer with inflammatory granulation tissue の病理組織学的診断を得た。
歯科用金属アレルギーの可能性も考慮し、当院皮膚科へ依頼し、歯科用金属のパッチテストが施行された。Pd(+)Ni(+)の判定を得、口腔内の歯科用金属を除去し、レジンへの置き換えを行った。その間含吸剤及び軟膏の処方は継続した。歯科処置終了から9か月経過時、口腔内病変は軽快を認めた。
【結 語】
今回我々は、口腔扁平苔癬様病変を生じている歯科用金属アレルギー患者に金属除去を行い、軽快した1例を経験したので、若干の考察を加え報告する。
株式会社シケンでの臨床データからCAD/CAM冠のトラブル対策の検討
株式会社シケン 1),医療法人社団明法会 2)
○吉田 清美 2),岩前 里子 2),永田 恭子 2),藤本 直也 1),高山 史年 2)
Study on Troubleshooting for CAD/CAM Crown IssuesBased on Clinical Data at Shiken Co.,Ltd.
Shiken Co.,Ltd.1),Medical Corporation Meihokai 2)
YOSHIDA Kiyomi 2),IWAMA Satoko 2),NAGATA Kyouko 2),FUJIMOTO Naoya 1), TAKAYAMA Fumitoshi 2)
【緒 言】
2014年4月から,小臼歯部のCAD/CAM冠上下の4,5番目の歯(小臼歯)に限定されて健康保険診療報酬に収容された。その後2017年12月からは下顎の6番目の大臼歯にも条件つきで拡大適用されるたが、さらに、2020年4月からは上顎の6番目の大臼歯も条件つきで
拡大適用が可能され、第6大臼歯以外の上下の犬歯を含む前歯もレジン前装冠またはCAD CAM冠から選択できるようになった。
その中で株式会社シケンがCAD/CAM冠小白歯の再製率の調査を2014年11月のデータから行っておりいくつかの知見を得たので今回報告する。
【方 法】
CAD/CAM冠小臼歯の再製率の調査は2014年11月より2017年3月までの29か月間のデータをCAD/CAM冠の再製率とその理由について調査をした。今回、このデータをもとに月別製作本数および月別再製理由と再製撃とブロック別メーカーと男女別等を数値化した。また再製理由や使用材料等も調査した。
【結果と考察】
CAD/CAM冠(小白歯)の再製率 CAD/CAM冠小臼歯の再製率の調査は2014年11月より2017年3月までの29か月間の対象本数82,195本のデータの再製率さらに使用材料と構成比率(本数):セラスマート68.85%(56,592本),KZR-CAD-HR2 30.29%(24,898本)松風ブロックHC O.86%(705本)となった。
以上よりCAD/CAM冠のトラブル対策では窩洞形成と加工との関係、臨床印象における支台歯形成の注意点、加工物の適合と調整方法、臨床成功には支台歯形成の協力が必要、口腔内スキャナー支台歯形成のポイントが重要と考える。
【参考資料】
1)株式会社ジーシー
セラスマートシリーズパンフレットより引用
2)YAMAKIN株式会社 歯科用デジタルハンドブック別冊より引用
展示ブース
企業による多数の展示ブースが設営され、最新の歯科医療器具や情報の展示がありました。
協賛団体・企業様
- 株式会社杏友会
- 株式会社歯愛メディカル
- 株式会社シケン
- Z-Systems AG (スイス Z- System 社)
- 株式会社トクヤマデンタル
- 株式会社4DX
- 相田化学工業株式会社
- 株式会社ジーシー
- 株式会社トクヤマデンタル
- 東京歯科医学教育舎